
イラスト:qnel
アルバムコレクションの運営に、思いがけない人物が関わっている可能性が出てきた。
ハワイの「Eclipse Incorporated」(以下イクリプス社)の社長として名前があった、William Leal(以下ウィリアム・リール)の父親が証言した。
父親によると、ウィリアムは兄の友人であったShaun Hart(以下ショーン・ハート)という人物から、ハワイでのイクリプス社の登記や銀行口座の開設を頼まれ、応じたという。
ショーン自身もハワイに暮らしていた。だが、別の罪を犯して公判を待つ間に、日本に逃亡。ハワイに戻ることができなかった。
これまでの取材でわかったのは、シンガポール在住の高浜憲一とマレーシア在住の新田啓介が、アルバムコレクションの前身となる「写真カプセル」を2015年に開始。途中からは新田が単独で運営し、「動画コンテナ」、アルバムコレクションと遷移させてきたらしいということだ。
写真カプセルの運営を始めた当初から、一連のアプリは子どもや女性のデジタル性暴力の温床となっていた。
新田がアルバムコレクションを2020年に譲渡したという先が、イクリプス社だった。
ウィリアムの父親の話が本当であれば、イクリプス社には犯罪を犯して逃亡してきた人物が関わっていたことになる。
TansaとNHK「調査報道・新世紀」の取材班は、2024年4月、イクリプス社が登記されているハワイのある住所へ向かった。
アルバムコレクションの運営者を追った取材の様子は、映像でもご覧いただけます。
登記簿に記された住所には…
当初、イクリプス社の登記には、街中心部に建つ高級マンションの一室の住所が記されていた。ウィリアムの父親によると、それはリール家がかつて住んでいたマンションだ。
登記簿をみると、その後イクリプス社は住所を変更。今度の住所はショッピングセンターなどが立ち並ぶエリアの、商業ビルの中に位置していた。インターネットで調べてみると、「Two Miles」(以下トゥーマイルズ)という会計事務所がヒットした。
トゥーマイルズは、イクリプス社の会計業務を担っていた。
私たちが住所を訪れると、2人の社員が対応した。やはりそこはトゥーマイルズのオフィスだった。イクリプス社には、登記用に住所を貸し出しているという。
「AppleやGoogleから正式なかたちで入金」
オフィスで会ったトゥーマイルズの社員は、後日イクリプス社についてわかる人物から連絡をすると話した。数日後、私宛にハワイオフィスの担当者から連絡があった。オンラインで話を聞けることになった。
私たちはまず、取材の経緯を伝えた。イクリプス社が運営を行なっているとみられるアルバムコレクションが、デジタル性暴力の温床となっていること。さらに米国内で指名手配を受けている人物が、イクリプス社の運営に関わっている可能性が高いことだ。
この担当者は、イクリプス社について「マッチングアプリを運営して、GoogleやAppleのプラットフォームで提供すると聞いていた」という。ウィリアムの父親が、イクリプス社の事業内容について、「Tinderのような」マッチングアプリだと聞いていたことと共通する。
犯罪に関わっている会社という認識はなかったのか。尋ねるとこう答えた。
「まったくないですね」
「ちゃんとAppleやGoogleからお金が入ってきている。正式なかたちでお金が入ってきていますので、ああ、なるほどと。けっこう儲かるんだなと、そういうような認識で、ずっとやっていました」
AppleやGoogleからは、年間いくら入っていたのか。
「範囲は、米ドルでいうとミリオン以上はあったと思います。1ドル100円としたら1億円以上という感じですかね」
最近のレートで換算すれば、少なくとも毎年1億5000万円以上だ。
「この人です」
トゥーマイルズの担当者は、イクリプス社を設立する手続きにも関わったという。その際1度だけ、イクリプス社のメンバーに日本で会った。
面談の場に現れたのは、どんな人物だったのか。
「最初は2人とか3人が登場してこられた」
私たちはウィリアム・リールの顔写真を見せ、面談の場に現れたのがこの人物だったのかを尋ねた。
「違いますね」
次にショーン・ハートの顔写真を見せた。
「細かくはよく覚えていませんが、この人っぽい。この人です」
担当者は続ける。
「その方はけっこう若い方ですよね。なにもわからない、というような感じだった印象をもっています。印象というか、記憶があります。本当に、この人はなにか英語がしゃべれるから、一緒にアメリカでビジネスをやるから、一緒にやっているだけなのかなという、思った感じですね。それくらい、なにもあまりわかっていないような印象を受けました。それは記憶にあります」
半グレ風
イクリプス社を立ち上げる際の会議の場にいたのは、ウィリアム・リールではなく、ショーン・ハートだったのだろうか。
トゥーマイルズの担当者は、「サトシ」という名前を記憶していた。米国人の父親と日本人の母親をもつショーンの日本名は、小南賢(サトシ)だ。
「サトシさんという人が、ハーフっぽい人ですかね。はいはい、サトシさんといっていました」
ビジネスを仕切っていたのは、サトシとは別の人物だと言う。
「その後やりとりしていたのは、ある1名の方。その方は、かなり数字とかをきちんとされている方で、その方と終始、やりとりをしている感じです」
日本人だという。どんな人物なのか。
「日本人で20代で見た目は、ちょっと、半グレじゃないですけども。かっこいいというか、スマートな半グレみたいな」
「すごくしっかりされている方で、対応も非常によかった。数字のことも、すごくちゃんとわかって、数字というか、会計のことも、ちゃんとわかっているなというような印象の方です」
契約書もなし
トゥーマイルズは、イクリプス社が犯罪に関わっていた可能性をまったく知らなかったという。だが少なくとも、イクリプス社は立ち上げの時点で、米国からの逃亡者を含んでいたことになる。顧問契約をしている会社について、問題がないかを裏付ける契約内容や手続きはなかったのか。
担当者は答えた。
「私どもの至らないところで、わりと、『なーなー』な感じで始まってしまうんですね。だから、がちっとした契約書を交わしていないんです」
「もう少し防げたのではないかということでいくと、本当に確かにそうだと思います」
沖縄で麻薬輸入、有罪判決
私たちがハワイで取材をしたのとほぼ同じタイミングで、イクリプス社は会社を閉鎖した。
トゥーマイルズの担当者はこう話していた。
「Appleのアプリが削除されて、もうビジネスができないので法人を解散することを考えているということで、今回が最後の決算だった。弊社としては解散をしていくという最終段階の状況であるのは認識していました」
ショーン・ハートとウィリアム・リールは2021年、日本で逮捕されていたこともわかった。沖縄の米軍基地を拠点に、コカインや大麻を米国から輸入した罪だ。ショーンには有罪判決が下されている。
私にはさらなる疑問が浮かんだ。
アルバムコレクションは2024年1月31日に運営を終了。同年4月にイクリプス社を閉鎖した。だが2021年時点で社長であるウィリアムが逮捕されていたとして、以降に運営を担っていたのは誰か。
やはり表には出てこない「半グレ」風の人物や組織が、アルバムコレクション運営の中心を担っていたのだろうか。最悪の場合、犯罪グループの収益源となっていた可能性も考えられる。
もう一つ、なぜAppleやGoogleはこうした組織に百万ドル単位の売上金を渡していたのだろうか。この間、アルバムコレクションなどのユーザーは相次いで逮捕されている。アプリストアには、児童ポルノが取引されているというレビューもあった。にもかかわらず、一連のアプリは少なくとも2014年から2024年初頭にかけて運営を続けた。
私たちはプラットフォームの内実を知る人物を、取材することにした。
=つづく
敬称略
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