人質司法 なぜ労組は狙われたのか

「答えないと釈放が延びますよ」夫の逮捕で検事から脅しの電話 それでも息子と確信した「父ちゃんは悪くない」/連帯労組 関西ゼネラル支部 組合員・西島友子さん<関西生コン事件・証言#18>

2025年06月25日 19時56分  渡辺周、中川七海

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保育士の西島友子さんは、息子2人と夫の4人家族。夫は、証言集第17回に登場した、関西生コン支部の組合員・西島大輔さんだ。

もともと、友子さんは労組活動についてよく知らなかった。「警察に目を付けられているかもしれへん」なんて夫が言えば、「ドラマを観て影響を受けてるんやろな」と軽く流していた。

ところがある朝、自宅のインターホンが鳴る。警察が夫を逮捕しにやって来たのだ。

動揺する子どもたちを守らなければいけない。友子さんは、小学生の息子2人とある約束を交わす。

母と息子の約束、大きな声で「行ってきます! 」

朝早くに、ピンポン、ピンポン、ピンポンってインターホンが鳴りました。主人が急に動揺し始めて。多分、主人は何のことかがわかっていたんでしょうね。警察が来たんだな、って。これまでの弾圧の光景を見てきたので気づいていたと思うんですけど、私はまったく知らなかった。

子どもたちは当時、小学4年生と6年生でした。その時は、主人がどうなるかよりも、子どもたちにどう響くかの方が心配でした。学校で何か言われたらどうしようとか、いじめられたらどうしようとか。この子たちを守りたい一心だったので、私がパニックになってはいけないな、と。

だから警察の方には、「夫は連れて行かれるんですね、はいはいわかりました」と。ただ、「学校の集団登校の時間だけは避けてほしい、それだけは約束してほしい」と伝えて、子どもたちに学校へ行く準備をさせました。

子どもたちは、すごく動揺していたと思います。「お父ちゃんはどこに行くんだ? 」って。言葉には出せていないけれど、「え、え、え? 」みたいな状態でした。だから子どもたちに言ったんです。

「父ちゃんはどこに行くかわからない。わからないけど、絶対に会えるから。今日は一番大きな声で『行ってきます』と言ってください。そうじゃないと父ちゃんも不安になっちゃうから」って。「すっごい大きい声で、元気いっぱいで『行ってきます』と言って学校に行こう」。

あと、「何か心配なことがあっても、今日は学校では言ったらあかん。それがどうなるかが、母ちゃんにはわからんから。後でちゃんと説明してあげるから、今日は学校に元気いっぱい行って帰ってきて、また話そうね」って。

そしたら2人とも、びっくりするぐらい大きい声で、「父ちゃん、行ってきます」って言って出て行ってくれたんです。

「警察に負けたくなかった」 夫を元気に見送り

子どもたちを送り出してからは、堂々としようと思いました。

しょうもないことですけど、動揺するのもなんか負けた気がして。突然やってきた警察に負けたくなかった。

なので警察に、「荷物は全部持っていかなくていいんですか? 」「これは置いていっていいんですか? 」「あれも入れておきましょうか? 」「何か要りますか? 」「荷物持ちましょうか? 」「写真撮ったらダメですか? 」「えっ? 手錠をつけて出ないんですか? 」とか尋ねました。ちょっとふざけた感じで。

主人もいろいろと感じていたと思うので、楽しく出て行ってもらうしかないと思って。「私は全くノーダメージですよ」っていうのを、なぜかアピールしたくって。何せ、へこみたくない、負けたくないっていう気持ちがありました。主人にも「楽しんでおいでやー! なかなか出来ひん経験やでー! 」みたいな感じで送り出しました。

大阪地検・天川恭子検事「夫婦関係は大丈夫なんですか」

当時、私は保育士として働いていたんですけど、仕事中に携帯電話にバンバン電話がかかってくるんです。周りの人が心配して、「電話出た方がいいんとちゃう? 」って言われるほどでした。

仕事を抜けて電話に出たら、大阪地検の天川恭子検事でした。「ご主人が何をされていたか知っていますか? 」とか、「組合員ってどういうことかわかりますか? 」とか。長くなりそうだったので、「仕事中なのでかけ直してもいいですか」と言いました。そしたら、「質問事項への返信が遅くなると、釈放されるまでの期間が延びるんですけど、大丈夫ですか? 」って。私からしたら、すごい迫られているような感じの電話でした。

「逮捕されたメンバーは、家族同士で連絡を取っているのか」とか、「今も組合と付き合っているのか」とか。最終的には、「普段の生活はどうだ」、「夫として、父親としてどうだ」とか、そういう話まで聞いてきました。

その時は本当に組合のことがわからないし、質問に答えたくても答えられなかったんですよ。「知らないです、ごめんなさい」みたいな。

そしたら、「そんな状態で夫婦関係は大丈夫なんですか」って。「気になるなら見に来てもらっても大丈夫です」という感じでしか答えられなくて。「最近ケンカしましたか? 」と聞かれても、「たばこを買ってお釣りを取るのを忘れて帰ってきたから、めっちゃ怒りましたね」って。

天川検事が想定していた答えを、私が出せなかったからか、すごい怒り出して。「もういいです! 」みたいな感じで電話を切られてしまいました。

子どもと考えた、「世の中って、悪くない人が罪を負うこともあるんかな」

主人が逮捕されてから、小学6年生の息子がそのことを調べ始めたんです。

私は、主人が自分の決断でやったものなのだから、罪になろうがなるまいが自分で責任を取るだろう、と。そこは主人に100%委ねていました。悪いことをしていないのはわかっていたし、いつか出てくる。それまでは私が家族をみます、安心してくださいっていう感じだったんですけど、上の子がすごい調べてくれたんです。

「母ちゃん、逮捕されたのってこういうことな、ああいうことな」って、教えてくれたんです。「じゃあ母ちゃんも調べてみるわ」みたいな感じで、一緒に調べるようになりました。

調べようとYouTubeを開けば、悪意があるような編集の仕方をしているものも出てくるけど、長男はそれらも一通り観ていたんです。一緒に観ながら、「これって違うと思うよな」っていうのを2人で考えました。「じゃあなんで父ちゃんは逮捕されたんかな。よくわからんな」っていうところから、政治の話とかを息子が振ってくれるようになりました。「もしかしたら世の中って、悪くない人が罪を負っていることだってあるんかな」、「政治がそうさせてるんかもしれへんな、世の中って正義が意外に勝たないことがあるのかもしれへんな」って一緒に喋りながら。

最終的に、どれが正しくて間違っているのかはわからないけれど、「やっぱり父ちゃんは悪くないのに捕まったんだ」と結論が出て、じゃあもういいやんなって。帰ってくるまでとりあえず待とう、ということになりました。

そのころ学校で、長男は様子が少しおかしくなったり、次男も授業中に突然泣き出したりっていうのがあったんですけど、絶対に父ちゃんのことは言わなかったんですよね。学校から「何かご存知ですか」って電話がかかってきましたけど、子どもたちが頑張って嘘をついているのに、私がペロッというわけにはいかないんで、「ちょっと最近、私が怒りすぎているのかもしれないですね」と濁していました。

手錠をかけられた父の裁判傍聴へ

主人の裁判にも、息子2人で傍聴に行きました。弁護士の先生は、「手錠をかけられたお父さんが出てくるから、子どもが入るべき場所ではないかもしれない」と気にかけてくれたんですけど、息子たちは「そこに行かないとお父さんには会えない」って。ずっと会えていなかったんでね。

主人が悪いことしていたら会いに行くべきじゃないけれど、「悪いこともしてへんのに警察に入って手錠をつけられてるなんて、滅多にない機会やから見ておいで」って、送り出しました。

私は仕事を休めなくて行けなかったので、主人の後輩に連れて行ってもらいました。すごくいい経験になったみたいです。子どもたちがワーっと泣いて、旦那もワーっと泣いて、ドラマみたいだったと周りから教えていただきました。

上の子は勉強して行ったのでよく理解していたようです。下の子は疲れて、帰ってきたら寝ていました。2人とも、お父さんのことを信頼しているのがわかりました。

保育士として、労組に加入

今は私も、労働組合に加入しています。関生支部と近い関係にある、連帯労働組合・関西ゼネラル支部という組合です。

多くの保育士って、労組に入っていないというか、そもそも存在をよく知らない人が多いです。私もそうだったんですけど、長時間勤務やサービス残業が当たり前で、我慢するか職場を変えるかしか選択肢がない。私は良い上司や同僚に囲まれて、楽しくやっていましたけど。

労組に入ったきっかけは、新たな保育園設立に携わったことです。ある法人から依頼されて、保育園立ち上げのために働いたものの、開園した矢先に3カ月で突然解雇されました。法人は保育園を立ち上げるための知識がないから、とりあえずそれが欲しかったのかな、と。開園したらあとは自分たちの好きなようにしたかった、っていうのがあったのだと思います。

どうしたらいいのか悩んだ結果、組合員になって闘ってみることで何かが変わるかもしれないと思い、初めて組合に加入しました。職場復帰は叶いませんでしたが、法人側が和解金を支払うことが決まりました。

逮捕のことも、組合のことも、おそらく普通に生きていたら気づけなかったと思います。それに気づける良い機会だったのだと思います。

【取材者後記】天川恭子検事に会って話がしたい/リポーター 中川七海

夫の逮捕後、西島友子さんのケータイに、大阪地検の天川恭子検事が電話をかけてきた。

天川検事の名前は、関生組合員やその家族への取材の中で、何度も出てきた。

「夫が何をしているのかわかっているかと、まるで私に隠れて悪いことをしているかのように言われました」

「このままでは夫が釈放されないからと、妻の私から組合脱退を説得するよう勧められました」

検察の狙いどおりに事を進めようと、職務上で知り得た家族の連絡先に電話をかけ、家族を揺さぶっているのだ。検察が起訴した関生組合員の中には、強要未遂の容疑をかけられた人たちがいるが、それは検察の方に当てはまる罪ではないのか。

だが、西島友子さんは天川検事の思いどおりには動かなかった。夫に組合脱退を勧めなかったし、突然の電話にも冷静に対応した。

冷静でなかったのは、天川検事の方だ。

欲しい情報を得られなかったことに腹を立て、「もういいです! 」と逆ギレ。仕事中の友子さんが出てくるまで繰り返し電話をかけ続けていたにもかかわらず、自分から電話を切ったという。大の大人が怒って電話を切ることなんて、なかなか無い。

裏を返せば、友子さんの反応が珍しかったのだろう。これまでは、自分の思いどおりに相手が動き、スムーズに事件を作ってこられたのだろうか。

私は天川検事に取材がしたい。直接会って、一つ一つ事実を確認したい。

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