
情報公開請求で入手した文書には、「決裁・供覧欄」に当時の官邸幹部の名前が並ぶ(文書を元にTansa作成)
安倍晋三・元首相の国葬実施を、国会に諮らず閣議で決めていいのか。そのことを官邸側が内閣法制局と協議したのは、2022年7月12日から14日にかけての3日間だ。
この3日間の協議内容の記録について、国は「作成していないか捨てた」という理由で文書が存在しないと主張している。
国の主張に疑問を呈したのは、東京地裁の篠田賢治裁判長だ。「国葬実施についての検討体制と決裁ラインは、どうなっていたのかを明らかにしてほしい」と、10月の第4回口頭弁論で求めた。決裁ラインとは、意思決定にかかわった責任者たちのことだ。
3日間の協議に参加していなくても、決裁にかかわる上司たちには報告したり相談したりする必要がある。そのために、協議内容を記録しているはずだという趣旨だ。
ところが、国は決裁ラインに関して事実に反する回答を出してきた。
第5回口頭弁論は12月23日午後1時半から、東京地裁大法廷の103号法廷で開かれる。
「保秘の観点から」
篠田裁判長が第4回口頭弁論で出した宿題は、以下の内容だ。
国葬を閣議決定で実施することについて、内閣官房と内閣府の検討体制と決裁ラインがどうなっていたか。
これに対して、国が次のように回答した。
内閣官房
「閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことについては、内閣官房における定例的・定型的な業務ではない総理大臣経験者の葬儀の形式という事案に鑑み、保秘の観点から、上席の職員である内閣総務官室の西澤能之元参事官及びその部下である御厩敷(おんまやしき)寛元企画官の2名のみで検討を行ったものであり、この件に関してほかに関わった職員は存在しない」
内閣府
「閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことについては、内閣府における定例的・定型的な業務ではない総理大臣経験者の葬儀の形式という事案に鑑み、保秘の観点から、上席の職員である内閣府大臣官房総務課の中嶋護元課長及び田原太郎元課長補佐の2名のみで検討を行ったものであり、この件に関してほかに関わった職員は存在しない」
国葬を国会にも諮らず、閣議決定で実施するというのは、重大事項だ。それにも関わらず、参事官や課長ら計4人でしか検討していないということはあり得ない。
国の主張が事実に反することは、Tansaが国を提訴した後に、情報公開請求で入手した文書が示している。
入手した文書は、内閣官房と内閣府の「故安倍晋三の葬儀の執行について」という標題の文書。起案日は2022年7月20日で「標記について、閣議を求めることとしてよろしいか伺います」とあり、7月21日に決裁されている。閣議で国葬実施を決めるまでの検討プロセスだ。
「決裁・供覧」には、起案者や代決を含めると、56人の名前があった。当時の岸田文雄首相や松野博一官房長官ら、官邸幹部の名前がズラリ。国が「この4人だけで検討した」という面々の名前も含まれている。
国葬実施の決裁者一覧
【内閣官房】
(起案者は総務官室総務担当・岩崎良浩)
内閣総理大臣・岸田文雄(代決 総理室・白倉純)
内閣官房長官・松野博一(代理 官房長官室・南順子)
内閣官房副長官・木原誠二(代理 衆・官房副長官室・萩原玲子)
内閣官房副長官・磯崎仁彦(代理 参・官房副長官室・弘田英規)
内閣官房副長官・栗生俊一(代理 事務・官房副長官室・成田洋基)
内閣総務官・松田浩樹
内閣審議官・黒田秀郎
内閣参事官・西澤能之
企画官・御厩敷(おんまやしき)寛
調査官・西牧則和
参事官補佐・堀江典宏
参事官補佐・森幸秀
主査・富永理代
主査付・谷口絹佳
主査付・石川翔
【内閣府】
(起案者は、大臣官房総務課・大島恵子)
内閣官房長官・松野博一(代決 大臣官房・南順子)
事務次官・田和宏
大臣官房長・原宏彰
公文書監察室審議官・原典久
総務課長・中嶋護
総務課長補佐・田原太郎
総務課係長・田中裕太郎
人事課長・矢作修己
会計課長・由布和嘉子
会計課参事官・山本元一
会計課長補佐・田邉浩二
会計課長補佐・柳澤泰洋
会計課係長・黒木良太
総務課参事官・田中宏和
総務課参事官・千葉均
総務課調整官・坂口常明
総務課係長・平田有
会計課調査官・錦織誠
会計課長補佐・木村学
会計課長補佐・新田道弘
会計課長補佐・吉田大
会計課係長・神田琢也
会計課係長・和田純一
会計課係長・大塚拓登
人事課参事官・熊谷勝美
人事課参事官・堤雅彦
人事課参事官・山口雄二
人事課企画官・室伏陽貴
人事課調査官・福山仁
人事課長補佐・伊藤涼子
人事課長補佐・阿部翼
人事課係長・工藤翼
人事課係員・遠藤史渉
人事課係員・鈴木宗光
総務課係員・猪口皓平
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