保身の代償 ~長崎高2いじめ自死と大人たち~【学校編】

繰り返されるいじめ自死 子どもを守れない学校を問う/シリーズ第2章「学校編」を始めます

2025年11月13日 19時00分  中川七海

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学校という閉ざされた空間で「いじめ」が起きたとき、子どもを預かる教育機関は、「絶対に子どもを守る」と断言できるでしょうか。

私は、断言できる教育機関はほとんどないと思います。

2025年10月、文部科学省が2024年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数を公表しました。77万件で、過去最多です。

学校側は、そのうち18万件が未解消であると文科省に報告しています。自ら命を絶った子どもは400人を超え、いじめが原因のケースも含まれていますが、正確な人数は誰も把握できていません。学校や行政の、実態を把握しようとする意思は希薄です。

毎日のように、死を選択する子どもが出てしまう社会には、明らかな欠陥があります。

2011年、「大津いじめ自殺事件」が起きました。中学2年の男子生徒が、同級生たちからのいじめを苦に自死した事件です。その後、学校や教育委員会がいじめの隠蔽を図り、自分たちの責任から逃れようとしました。

大津での事件を受けて、2013年に「いじめ防止対策推進法」が制定されました。学校、自治体、国がとるべき対応と責任などが盛り込まれた、子どものいじめに関する国内初の法律です。

しかし法律で定められた対策を、学校や監督行政が怠り犠牲者が出ても、罪には問われません。子どもを守る法律とは言えません。

実際、制定から10年以上が経っても、いじめや自死の数は増えています。

これは、子どもたちの問題ではなく、大人たちの問題です。

私たちは皆、「いじめ」を経験しているはずです。いじめる側、いじめられる側、いじめを目撃する側の、いずれかに当てはまりませんか。しかし多くの人は、時とともに学校を去ります。気付かぬうちに学校でのいじめが「他人事」になります。

でも実際は、学校でのいじめは存在し続けています。私たちが見過ごしてきた結果が、今の子どもたちを苦しめている原因ではないでしょうか。

学校も行政も、変わらなければいけません。そのためには、すべての大人が真剣に向き合い、声を上げ、悪循環を止めるしかありません。

読者の皆さまへ

シリーズ第1章「共同通信編」では、長崎県で起きた、福浦勇斗さんのいじめ自死事件をめぐる、「メディアの保身」を報じました。(第1章はこちら)

第2章では、勇斗さんが通っていた海星学園の実態に切り込みます。

勇斗さんの自死の隠蔽を図った海星学園は、現在も遺族の前に立ちはだかっています。在校生や保護者に事実と異なる情報を流布したり、自死の原因がいじめであると認定した第三者委員会の報告書を否定したり。自校の生徒が命を絶った責任を感じているとは思えない言動を重ねています。

勇斗さんの自死から8年が経ちますが、遺族は裁判を通して海星学園と闘っています。なぜ、わが子を亡くした親が、二重三重の苦難を強いられるのでしょうか。

さらに、海星学園での犠牲者は、勇斗さんだけではありませんでした。今も学校運営を続ける海星学園ですが、子どもを預かる教育機関としての資格はあるのでしょうか。

11月20日より、毎週木曜日に連載します。

子どもを守れるかどうかは、大人たち次第です。子どもをもつ人も、そうでない人も、今一度真剣に、子どものいじめについて考えを巡らせていただけることを切に願います。

2025年11月13日 中川七海

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