
衆院選で支持を訴える自民党の山際大志郎氏=川崎市で2026年2月3日、千金良航太郎撮影
自民党総裁の高市早苗は、2026年1月27日公示の衆院選で、当落線上にある候補者の応援に飛び回っている。
1月31日には、神奈川18区から立候補している山際大志郎のもとへ駆けつけた。山際は、統一教会総裁のハン・ハクチャ(韓鶴子)と面会するなど教団との関係の近さが問題となり、2022年に経済再生担当大臣の辞任に追い込まれている。前回2024年の衆院選では小選挙区で敗れた。
今回の選挙も山際は苦しい。
Tansaが入手した自民党の情勢調査によると、中道改革連合の宗野創にリードされる展開だ。高市は「山際さんとは日本の経済を強くするため一緒に歩んできた。どうか当選させてください」と訴えた。
しかし、その裏で重大な事実が隠されていた。
山際の事務所では、統一教会で活動していた人物が秘書と会計責任者を兼ねており、今回の衆院選でも選挙活動を支えていたのだ。
高市はTM特別報告書が明るみに出て以来、「党としては党内の調査結果も踏まえ、教団との関係を完全に遮断した上で、厳格化したガバナンスコードの順守を徹底している。今後もその方針に揺らぎはない」と言っている。
NHK番組の欠席に疑念
高市早苗は、山際大志郎の応援演説をした翌日の2月1日、NHKの討論番組を急きょ欠席した。翌2日、欠席理由について、官房副長官の尾崎正直は「持病の関節リウマチが遊説中に悪化をして、1日朝に治療が必要となった」と述べた。
だが高市は、番組を欠席したその日に岐阜県や愛知県で演説をしている。その際に語った理由は「昨日ハイタッチとかしているときに強く引っ張られて、関節やっちゃいました」。当初と理由が食い違っている。
何かがおかしい。
Tansa編集長の渡辺周は、NHKの番組前日に行った山際の応援演説を疑った。NHKの番組には、れいわ新選組の大石晃子が出演予定だった。大石は1月26日にはTBSの「news23」で、TM特別報告書に高市の名前が出ていることを指摘。高市は「名誉毀損になりますよ」と感情的になっていた。統一教会との関係が発覚し大臣を辞任した山際の応援演説をしたことを、大石から追及されることを恐れたのではないか。
だがそれだけで、NHKの番組をキャンセルするだろうか。渡辺にはある疑問が浮かんだ。
山際が統一教会の信者として活動していた人物たちを、今も秘書として起用していることと関係があるのではないか――。

衆院選公示日、連立を組む日本維新の会の吉村洋文代表らと共に演説する自民党の高市早苗総裁(中央)=東京都千代田区で2026年1月27日、千金良航太郎撮影
秘書は「偽装勧誘グループ」の元メンバー
小川久仁子という神奈川県議がいる。
小川は山際と同じ選挙区を地盤としており、元々は自民党の県議だった。
しかし、小川には許せないことがあった。安倍晋三が殺害された後、山際は表向きには統一教会との関係を断ったと説明しながら、統一教会の信者だった「A」と「B」が山際事務所で秘書として働き続けていたからだ。
小川は自民党の県議として、同じ選挙区の国会議員である山際の選挙に協力してきた。AとBが統一教会で活動していたことを知っていた。
小川は、山際と統一教会との関係を追及した。2024年11月には、抗議の意思を示すため自民党を離党した。
Aは2025年1月、名誉毀損容疑で小川を神奈川県警高津署に刑事告訴した。山際事務所は「当事務所は、旧統一教会との関係を断絶したことを表明してきたが、小川氏は当事務所秘書が旧統一教会員であると執拗に言い募り続け、記者会見まで開いた。重大な人権侵害」と告訴した理由を公表した。
だがAが、統一教会で活動していたことは明らかだ。
ジャーナリストの鈴木エイトは、2024年10月26日付の『文藝春秋』の電子版で、Aについて詳報している。
鈴木はAのことを、以前から知っていた。2000年代中頃、Aは統一教会の「伝道機動隊」のメンバーだった。伝道機動隊とは、正体を隠して街頭で勧誘を行う青年信者のグループのことだ。Aは、働きながら活動を行う「勤労青年」ではなく、出家信者に当たる「献身者」だった。鈴木はAの勧誘現場に何度も介入し、被害者を救った。
Aは、地方議会選挙や国政選挙で選挙運動などを行う「ビギン」という青年部組織の班長も務めていた。2010年に統一教会が東京・秋葉原で実施したデモで、Aが街宣車から拡声器でシュプレヒコールを上げた際の様子を、鈴木は撮影している。
TBSの「報道特集」でも、2022年11月にAのことを報じている。
Aは足立教会で、ムン・ソンミョン(文鮮明)の7男、ムン・ヒョンジン(文亨進)と共に写真に写っていた。
足立教会でAのもとで仕事をした元信者も証言した。
「Aは班長たちの中では一番熱心。『神様の願いだから一緒に選挙活動に参加してくれないか。一緒にこの国を救おう』と言っていた」
Bについては、小川久仁子が自民党の川崎市連のパーティーの後片付けを一緒にしている際、「あなた、統一教会の人でしょう」と尋ねた。Bは「はい」と答えた。
山際は2012年、A、Bの両名と「チームやまぎわ」として写真を撮影している。

(左から)A氏、山際氏、B氏=山際氏のSNSから(画像の一部を加工しています)
選挙を切り盛り
話を2026年2月2日に戻す。
高市早苗がNHKの討論番組を欠席した理由について、官房副長官の尾崎正直は「持病の関節リウマチが遊説中に悪化をして、1日朝に治療が必要となった」と述べたのに対し、Tansaの渡辺は疑いを持った。統一教会で活動していたAとBが、今も山際事務所で働いており、高市はそれを追及されるのを恐れたのではという疑念だ。
渡辺は、かねてより知り合いの小川久仁子にメールして、山際がこの選挙でも統一教会で活動していた人物を起用していないか尋ねた。
「使っていますよ。Bが山際の街頭演説の場所取りをやっているのを見ました」
小川によると、Bは2月1日の午後1時10分ごろ、川崎市の溝の口駅前大通りで街頭演説のための場所取りをやっていたという。
ただ、Aが今回の選挙で活動しているかの情報はなかった。Tansaは2月3日、5人で山際の溝の口駅前での街頭演説に向かった。この日、自民党政調会長の小林鷹之が応援演説に来ることになっていた。
Aはいた。オレンジ色のジャンパーを着て、段取りを仕切り、支援者にはにこやかに応対していた。街頭演説が始まれば、スマホで写真撮影。フットワークが軽く、山際陣営をリードしている印象だった。

溝の口駅前での山際氏の選挙活動に参加していたA氏(中央)=川崎市で2026年2月3日撮影(画像の一部を加工しています)
実際、2025年5月30日に神奈川県選挙管理委員会に提出した「収支報告書」によると、山際が代表を務める「自民党神奈川県第18選挙区支部」の会計責任者は、Aになっていた。山際の金庫番なのだ。
政官要覧の最新版である2025年冬号でも、Aは山際の秘書として記載されている。
Tansaは山際事務所に、本件に関する質問状を出したところ、以下の回答が来た。
当事務所では、既に公表している通り、旧統一教会との関係を断絶しております。
統一教会は以下の通り回答した。
特定の個人が信者か否かという質問に対しては、プライバシー順守の観点からお答えすることはできません。
また当法人が、教団として特定の政治家や政党に対して支援等を行うことはありません。ましてや、当法人が、特定の政治家の活動について「指示」を出すことなど絶対にあり得ません。
なお、いわゆる「TM特別報告」について、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が作成した内部文書」と述べておられますが、当法人が同文書を作成した事実はありません。当法人は、同文書について、作成者らによる誇張や改ざん、編集などが多分に含まれており極めて信憑性を欠く怪文書と認識しています。
TM特別報告で「反共主義の高市には中国外交で期待」
山際と高市のことはTM特別報告でも、言及されている。
2021年9月30日のTM特別報告。国際勝共連合の梶栗正義は、山際のことを「私と友人関係」と述べ、政府や党の要職に就くことを期待している。ハン・ハクチャも山際のことは「よく覚えていらっしゃる」という。
私と友人関係でもあり、お母様がよく覚えていらっしゃる山際大志郎議員も岸田氏と非常に近しい間柄です。私と世代が近く、親しい議員たちがどれほど多く政府や党の要職に登用されるか期待しております。
そして、現在78名である世界平和議員連盟正式会員国会議員たちが、総選挙で一人でも多く当選し、天の前で一層大きな役割を果たしてくれることを望んでおります。私の夢は彼ら平和議員たちが100名の連名でお母様を正式に日本に招き、日本の皇室ともご縁を結ばれることですが、そのようなことを実現するために大変重要な時期を迎えています。
2021年10月3日、統一教会会長の徳野英治も山際に言及し、「私たちと心情的に近い」と期待を寄せている。
真のお母様も覚えておられると思いますが、2013年10月20日に長野教会という唯一の教会施設で、真のお母様を迎えた大会を開催した時に、横浜選出国会議員でありながら真のお母様の洗礼ヨハネ役を務め、来賓挨拶をするために長野まで来てくれた、若くハツラツとした、そして美男の国会議員です。
彼は東京大学獣医学部出身で、大変ユニークなキャリアを持っており、今回内閣経済再生担当大臣として任命される予定となっています。私たちと心情的にも近く、さらには年齢が53歳であり今後大きく活動してくれることと期待できます。
その山際の応援演説に駆けつけた高市は、安倍晋三の後継者として統一教会に期待されている。
2021年9月29日開票の自民党総裁選について、徳野が9月18日のTM特別報告で述べている。
自民党の総裁選ですが、最近の傾向としては4名の候補者たちのスキャンダル報道がマスコミに出始めています。やはり政治の世界は泥仕合のような運命を避けられないことを痛感いたします。特に注目すべきは、安倍元首相が高市早苗氏を本当に全面的に応援してきているという点です。
あまりにも応援するため、むしろ自民党の議員たちから反発が出始めており、今日時点で応援はストップする方針に変えたという報道まで出ています。
安倍首相は「高市早苗氏でなければこれからの日本を引っ張っていくことはできない。私は首相時代にあなたの応援のために何度も応援遊説を行ったではありませんか?」という発言まで行いながら、自民党の全ての議員経験者に対して高市早苗氏を応援してくれと一生懸命に本人が直接電話をかけています。
それによって高市早苗氏の支持がだんだんと、しかし確実に拡大したのは事実です。ですがあまりにも応援してむしろ自民党議員たちから反発が出始め、いわゆる逆効果になり、今はあんなに熱心にかけていた電話をストップするしかない状況です。
ともかく、今も与党・自民党内において安倍元首相の影響力はやはり戦後最長である7年間続けて首相を担ったことで、絶対的なものであると分析しています。
2021年の総裁選は岸田文雄が勝ち、国会で第100代の首相に選出された。10月1日の徳野のTM特別報告。高市が首相になっていれば、安倍が高市を統一教会につなげてくれたはずだと推察している。高市のことは、右翼的で反共産主義者だとみており、対中国では期待できるが、日韓関係は改善されないとの予測をしている。
もし高市氏が選出されていたら、100代目の日本の首相が女性になり、世界の祝福を受けたことでしょう。
また、安倍元首相と私たちの距離が近しいことから、私たちにすぐに高市氏をつなげてくださったことに違いないと思いますが、高市氏は右翼的、民主主義的な思考が強い反共産主義者として、中国に対しては期待できる外交政策を展開できるかもしれませんが、日韓関係は改善されない可能性が高いとみるしかありません。
(韓日翻訳:姜旼宙)
(敬称略)
主な参考資料
「神奈川県の深刻な“旧統一教会汚染” ベテラン県議が離党と引き換えに訴えたこと」(鈴木エイト、文藝春秋電子版)
「旧統一教会 検証13弾 山際議員と教団」(TBS「報道特集」)
「TM特別報告書」を報じるにあたって
TM特別報告書に関し、統一教会は反論し、自民党は目を背けています。
統一教会側からは2026年1月16日、世界平和統一家庭連合広報渉外局が「『TM特別報告 』(俗称)に対する当法人の見解」を公表しました。
見解では、TM特別報告書を作成した元世界本部長のユン・ヨンホ(尹煐鎬)氏のもとで活動していたとされる職員のリポートを掲載。TM特別報告書には意図的な省略、書き換え、追記が含まれている可能性が高く、「極めて信憑性に欠ける」と指摘しています。リポートの筆者である職員は匿名で、役職等も記されていません。
また、TM特別報告書に出てくる日本の政治家との関係については、「事実関係を超えて表現が誇張されている、文脈が脚色されている、あるいは事実として確認できない内容が含まれている可能性を否定できません」と書いています。
統一教会側からは、元会長の徳野英治氏もXで2026年1月8日に発信しました。TM特別報告書について、「私が韓総裁に報告するために元世界本部長に送った報告が含まれているのは事実」と自身の報告が含まれていることを認めた上で、「個人的意見や希望的予測なども多く含まれています」などと記しています。
自民党は元総裁の安倍晋三氏が殺害されて2カ月後、2022年9月に統一教会との関係を調査し「党としての組織的な関係はない」と結論を出しました。調査は議員による自己申告で極めて不十分なものでしたが、現総裁の高市早苗氏は、TM特別報告書を検証する意思が今のところは全くありません。2026年1月26日にはTBSの「news23」に出演。れいわ新選組共同代表の大石晃子氏にTM特別報告書に高市氏の名前が出ていることなどを指摘され「出所不明の文書」「名誉毀損になりますよ」とまで言っています。
Tansaは、3212ページある韓国語のTM特別報告書すべてに目を通しました。AIによる分析も活用し、翻訳者、取材パートナーである韓国の探査報道組織「ニュースタパ」と共に検証しました。
統一教会に関しては、ジャーナリストや研究者、被害者対策に取り組んだ弁護士や宗教家による膨大な調査結果が蓄積されています。Tansaは先達の仕事に敬意を払い、その成果も活用させていただきながら、TM特別報告書を検証しました。
その結果、統一教会と自民党の長年にわたる共依存を解き明かす上で、TM特別報告書は極めて重要な資料であると判断しています。
TM特別報告書について報じながら、取材を続けます。統一教会と自民党の癒着について、明かされていない内部情報をお持ちの方は、ぜひTansaまでお寄せください。責任を持って情報源を秘匿し、お守りします。
情報提供にあたっては、以下のページをご参照ください。連絡方法や注意点、公益通報者保護法のポイントを掲載しています。
https://tansajp.org/whistleblower/
統一教会は2015年に「世界平和統一家庭連合」と名称変更し、マスコミ各社は「旧統一教会」と呼称しています。しかし、教団がはらむ問題には連続性があるため、Tansaは「統一教会」と表記します。
2026年1月27日
Tokyo Investigative Newsroom Tansa
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