©︎Nanami Nakagawa
沖縄の県知事選挙で玉城デニー氏が勝利した。
玉城知事は「重要政策」の一つに、PFOS(ピーフォス)汚染への取り組みを挙げていた。PFOSは、人体に有害な化学物質だ。石油系の火災で使う泡消化剤や、航空機の作動油などに使われてきた。私が現在報じている大阪・ダイキン工業のPFOA(ピーフォア)と同じ有機フッ素化合物で、ほとんど同じ毒性をもつ。
沖縄では2020年、全国最高濃度のPFOSが川から検出された。環境省が実施した、PFOSとPFOAの全国一斉調査で明らかになった。
PFOA濃度の全国1位は大阪府の地下水だ。結果は次のとおり。
環境省が定める「PFOA+PFOS」の目標値 1リットルあたり50ナノグラム
全国最高値を記録した沖縄県内のPFOS値 1462.8ナノグラム(目標値の約29倍)
全国最高値を記録した大阪府内のPFOA値 1812ナノグラム(目標値の約36倍)
互いに全国トップの汚染が起きている大阪と沖縄。だが、両知事のスタンスは大きく違う。
沖縄での汚染の原因は、米軍基地からの排出だと見られている。玉城知事の選挙用ポスターには、大きな字でこう書かれていた。
命の水をPFOSなどから守る/米軍基地への立ち入り調査を求めます
対照的に、大阪の吉村洋文知事はこの問題にまともに向き合っていない。
2022年4月、参議院環境委員会で大阪府内のPFOA汚染が審議された。環境大臣は、汚染源であるダイキンが敷地外へ排出したPFOA量の把握について、「(それは)大阪府知事の仕事」と答えた。
この答弁をもとに、私は大阪の吉村知事へ取材を申し込んだ。しかし吉村知事は取材を拒否。代わりに、担当課である事業所指導課の3人の職員が取材に応じた。萩野貴世子課長、窪田剛主査、深江健吾技師だ。だがこの3人は、まるで吉村知事の態度が伝染しているような、自分の雇用主が住民ではなく吉村知事だと言わんばかりの酷い対応だった。
例えば、ダイキンによるPFOA排出量の把握については、国会で環境大臣から府の仕事だと指摘されている。だが萩野課長は「排出量を把握する必要はない」と述べ、ダイキンへの確認作業を拒否した。
さらに驚かされたのは汚染原因の認識についてで、事実と全く異なる発言を繰り返した。ダイキンは自社を「主たる原因」とは認めていない。それどころか当時、汚染源の一つですらない可能性を表明していた。ところが窪田主査は「ダイキンも(主たる原因だと)認めています」の一点張り。その上でダイキンと対策会議を重ねていると言う。
もしダイキンが自社を「主たる原因」と認めていれば、被害者への補償の話を始めることができる。とても重要なポイントだ。私はダイキンに再確認するよう、目の前の3人に何度も要請した。だが3人は「確認の必要はない」とそれを拒否。後日、私がダイキンに直接確認したところ、「大阪府が間違っている」と述べた。
大阪府は虚偽の説明をし、虚偽を指摘されても確認の電話をすることすら拒否したのだ。PFOAによって直接的な被害を受けるのは、大阪府に税金を払っている大阪府民である。いったい大阪府は誰に寄り添っているのだろうか。ダイキンだろうか、吉村洋文氏だろうか。
私は府の秘書課を通して、吉村知事に抗議文を送った。併せて知事本人への取材を再度申し込んだ。
2日後、府からメールが届いた。秘書課からではない。数日前に取材した窪田主査からだった。吉村知事は「取材を辞退」するとのことだった。
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