誰が私を拡散したのか

「撮影罪」が今日施行 同意のない性的画像の撮影・拡散は禁止に こんな被害に遭っていませんか?(13)

2023年07月13日21時19分 辻麻梨子

(イラスト:qnel)

7月13日、本人の同意を得なかったり、他の人には見せないと騙したりして性的な姿を撮影することを罰する「撮影罪」が施行されました。撮影したものを提供することや、提供する目的で保管することも罪に問われます。

この法律は、探査報道シリーズ「誰が私を拡散したのか」で報じてきた被害の一部を、犯罪行為と規定しています。

これまで泣き寝入りするしかなかった被害だとしても、これからは相手方の法的責任を問える可能性があります。現在、同意のない性的な画像を撮影されたり、それを広められたりして困っている方にとって、新法を理解する一助となるよう本記事でその内容を解説します。

撮影罪の第一条に定められている目的は、「性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止すること」です。

具体的には次のような被害に遭った場合、相手方の行為が法律より罰せられます。

①盗撮されてしまった

裸の性的な部分や性的な行為のようすを、あなたが気がつかないうちに撮られたり、同意をしていないのに撮影されたりした場合、相手の行為は「性的姿態等撮影罪」に当たります。下着を身につけていても当てはまります。

これまでは都道府県の迷惑防止条例などで対応していましたが、全国一律の規制ができました。

こうした撮影行為を行った者には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課される可能性があります。

また法律には、加害者が持っている性的画像の撮影データを没収し、消去することができると明記されました。相手が不起訴になっても、消去は可能です。さらには押収したものの中に、捜査中の事件とは別の同意のない性的画像や児童ポルノが入っていた場合にも、これらを消去できます。

②知人やパートナーに性的な画像を撮影されてしまった

例えば性的な行為などに同意していても、撮影されることには同意していないのに撮影されてしまった際には、①と同様に「性的姿態等撮影罪」が成立します。あなたが同意困難な状態で、撮影することも犯罪です。「同意困難な状況」とは暴行や脅迫をされる、お酒や薬物を摂取している、睡眠時や意識不明などで、同意を示すことが難しい状況を指します。

「自分が見るためだけに撮影する」「これは性的な行為ではないから大丈夫」などと、あなたを騙した状態での撮影も同様に禁止されます。

撮影に同意していた場合でも、それを無断でばら撒かれたり、ばら撒く目的で他の人に渡されたりした場合には、相手の行為は犯罪です。リベンジポルノ防止法に違反します。

③同意なく撮影された性的な画像を拡散されてしまった

盗撮やあなたの同意を得ていない性的画像であると知りながら、それらを特定の相手や少人数のグループなどに拡散することは、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑に該当します。不特定・多数の人に提供したり、SNSや掲示板などで誰でも見られるように掲載することは、さらに重い5年以下の懲役または500万円以下の罰金が課されます。

画像のやりとりの際に、金銭の支払いがあったかどうかは関係ありません。提供を受けた人が、また別の人に提供するという二次的、三次的な提供の場合でも、それぞれの人が処罰の対象になります。

こうした画像を提供したり、公開したりする目的で保管することも禁止されます。2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課されます。

画像が、犯罪によって撮影されたものであると知りながら保有している場合は、犯人ではない人からであってもこれらを没収することもできます。

ただし提供する目的ではない「単純所持」では、撮影された人が18歳未満の児童の場合以外には処罰対象にはなりません。

④盗撮などをライブ配信された/画面収録された

あなたの同意のない盗撮などを、不特定多数に向けて送信・ライブストリーミングすることも禁止です。5年以下の懲役または500万円以下の罰金が課されます。また送信されたものが違法に撮影されたものと知りながら、画面収録機能などを使って記録してもいけません。

①〜④の行為は、加害者の日本人が国内にいない場合でも、国外犯として取り締まることができます。

企業の対応も必須

撮影罪の新設で、これまでは刑法で取り締まれなかった加害行為が犯罪と規定され、処罰につながることが期待できます。

他方で、同意のない性的画像を価値のあるものとして広めるインターネットの利用者と、それを支える仕組みが変わらなければ、根本的な犯罪の抑止にはならないと私は考えます。SNSや動画視聴・投稿サイトなどを運営する企業は、自社の管理下で犯罪行為が起きないように予防・対応措置をとるべきです。

企業のこの問題への取り組みが不十分な中、性的画像に目をつけ、カネ儲けに利用しているサイトが今も多くあります。拡散した画像を削除する法的義務もありません。本シリーズでは引き続きこの問題を報じます。

デジタル性暴力の被害に遭った方へ

最寄りの警察署への相談のほか、利用できる支援団体や相談窓口を紹介します。

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター:性犯罪・性暴力に関する相談窓口です。産婦人科医療やカウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携しています。

NPO法人ぱっぷす:リベンジポルノ・性的な盗撮・グラビアやヌード撮影によるデジタル性暴力、アダルトビデオ業界や性産業にかかわって困っている方の相談窓口です。

よりそいホットライン:電話、チャット、SNSなどで性的被害について専門相談員に相談ができます。

インターネット・ホットラインセンター:児童ポルノなどを見つけた場合に通報することができます。通報をもとに、センターが警察に情報提供したり、サイト管理者等に送信防止措置を依頼します。

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