誰が私を拡散したのか

運営会社の代表者は、NITTA(15)

2023年09月28日21時45分 辻麻梨子

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(イラスト: qnel)

児童ポルノや、本人の同意がない性的な画像が取引されているアプリ「アルバムコレクション」。私はこれまで、アプリを運営する人物の正体を知るべく取材を進めてきた。

前回の記事では、アルバムコレクションがウェブサイトなどに掲げていた会社名「Eclipse Incorporated」が、ハワイのペーパーカンパニーである可能性が高いことを伝えた。運営責任者に名前のあった「William Leal」も架空の人物のようだ。

アルバムコレクションは、一見普通の写真や動画の交換アプリだ。宣伝では、修学旅行や家族の写真・動画を思い出として共有しようと謳っている。

だが実際には、児童ポルノや違法な性的画像ばかりが取引されている。アルバムコレクションの運営者は「性的商品」の売買をビジネスの柱としている。ペーパーカンパニーで身分を隠すのも、犯罪に加担した責任から逃れるためではないのか。

そう考えた私は、Cheena(チーナ)、retr0(レトロ)と名乗る匿名のホワイトハッカー2人と共に、運営者を突き止めるための調査を始めた。得た情報のソースはすべて、誰もが利用可能なオープンデータだ。

その結果、運営者と考えられる人物にたどり着いた。重要な手がかりとなったのが、アルバムコレクションと類似した2つのアプリだ。いずれも、違法な性的画像を取引していた。

順番に説明しよう。

今回発覚した運営者の構図

ファイルに頻出する「PHOTO CAPSULE」

「アルバムコレクションのAPKファイルを入手したので、解析してみます」。

調査を進めていたある日、retr0から連絡をもらった。

APKファイルとは、Androidで使用できるアプリの情報が詰まったものだ。アプリの開発者は、このAPKファイルを制作することをゴールとしている。

retr0は、アルバムコレクションのAPKファイルに繰り返し出てくる、「PHOTO CAPSULE」という名前に気がついた。

以下は実際のAPKファイルのデータだ。黄色にハイライトした部分に、PHOTO CAPSULEの文字がある。これらはファイルのライブラリ名や変数名に頻出していた。このことは、アルバムコレクションが、PHOTO CAPSULEというアプリから多くの情報を引き継いで作られた可能性を示している。

APKファイル内で見つかったデータ

仕組みも宣伝文句も酷似した別アプリ

PHOTO CAPSULEという名のつくアプリはないか。

調べを進めると、PHOTO CAPSULEを日本語にした「写真カプセル」というアプリに行き着いた。パスワードを使って写真や動画を共有するという、アルバムコレクションとまったく同じ仕組みを備えている。有料のカギを不要に設定できる120時間という期限や、写真や動画が14日間サーバーに保存されるといったルールも同じだ。

現在は利用できないが、2015年当時のアプリの説明文と宣伝文句を発見した。アルバムコレクションと酷似している。

アルバムコレクション

アルバムコレクションは写真や動画をカンタンに送受信できます。

今まで1つづつアップしていた写真や動画ファイルって結構めんどくさかったですよね?!

このアプリなら大量の写真を一度に送れます!

しかも、パスワード付きでアップ出来るのでセキュリティも万全!

【使い方はシンプル】

1.パスワードを設定して写真を送信(アップロード)

2.パスワードを入力して写真を受信 (ダウンロード)

たったこれだけで簡単共有!

みんなで旅した卒業旅行や修学旅行の写真や動画をパスワードを送るだけで簡単共有!

大切な家族写真との思い出だってかんたんに共有!

彼女や彼氏の写真や動画をカンタンに共有!

写真カプセル

写真や動画を簡単共有!

今までメールやLINEで小分けに送っていた写真もこのアプリを使えば大量の写真を一度に送れちゃいます。

【使い方は超シンプル】

1.秘密のパスワードを設定して写真を送信

2.秘密のパスワードを入力して写真を受信

たったこれだけ!

卒業旅行や修学旅行の写真をみんなで共有するにも良し!

家族の大切な思い出を残すにも良し!

カップルで写真を交換するにも良し!

使い方は様々です。

大容量の写真を友達・家族・カップルと一緒に共有してね!

会員登録なし!ログイン不要!

ポイントも貯まるので小遣い稼ぎにも使えるよ!

写真カプセル+とアルバムコレクションのGoogleでの検索結果は、その文言や配置がほとんど一致している。

写真カプセルは現在、名前を「写真カプセル+」と変えている。

アプリの名前や情報を一部だけ変え、使い続けるというのは常套手段だ。違法な性的画像の取引が問題になっても、情報を変えて「新しいアプリ」として打ち出すことができる。アプリをストアに掲載する、GoogleやAppleの審査も通過できる。

写真カプセル+では、今も児童ポルノが堂々と取引されている。

画像の入ったフォルダを開けるためのパスワードは、写真カプセル+のウェブサイトの掲示板に投稿される。掲示板でパスワードに添えられる「宣伝文句」は、ほとんどが子どもの性的虐待を思わせる説明や、シチュエーションなどを示す隠語だ。

小さな女の子を表す「炉娘」や、「子ども同士(兄妹)」と書いて児童ポルノであることがわかるようにした投稿が見つかった。

動画コンテナと共通するID

もう一つ、アルバムコレクションとの関連が見つかったアプリがある。「動画コンテナ」だ。

アルバムコレクションと共通していたのは、「Google Analytics」の識別IDだ。アルバムコレクションのウェブサイトから見つかったIDが、動画コンテナでも使われていた。

Google Analyticsとは、ウェブサイトの解析に使われるツールである。サイトにどんなユーザーが訪れているのか、どのコンテンツがよく見られているのかなど、さまざまな情報を得ることができる。

Google Analyticsで得られるのは、運営者がサイトの動向を知るための重要な情報だ。IDが同じ場合、同じ人物がサイトを管理していると言える。

動画コンテナは数年前に頻繁に使われていたアプリで、これもやはり、本人に同意のない性的な画像や児童ポルノの取引の温床となっていた。

次々と類似アプリを制作

ここまでで、アルバムコレクションは、写真カプセル、動画コンテナの双方と共通点があることが判明した。

では写真カプセルと動画コンテナの共通点は何かないか?

私たちは、これらのアプリの過去の情報を掘り起こしていった。

インターネット上では情報を削除したり書き換えたりできるが、変更前の情報を保存しているサービスがある。都合が悪い情報が消されていても、辿ることができる。

共通点は、あった。

写真カプセルと動画コンテナの運営者として、共通する会社と代表者の名前が見つかったのだ。アルバムコレクションは、写真カプセルと動画コンテナとの共通点がある。アルバムコレクションの運営者でもあるはずだ。

三つのアプリとも、取引しているのは児童ポルノや違法な性的画像だった。この運営者は問題が発覚するのを防ぐため、新たなアプリを次々に作ったのではないかと私は推察する。

運営事業者名

MAX PAYMENT GATEWAY SERVICES PTE. LTD.

代表者名

KEISUKE NITTA

「MAX PAYMENT GATEWAY SERVICES PTE. LTD」のオフィスはシンガポールにあると書かれている。「KEISUKE NITTA」は日本人の名前のようだ。一体何者なのか。

今回の記事で判明したのは、下の図のようなアプリ同士の関係性だ。

私たちはさらに調査を進めた。

=つづく

シリーズ「誰が私を拡散したのか」の取材費をサポートいただけませんか。巨大プラットフォームも加担する性的な写真や動画の拡散が、多くの被害者を生み出しています。私たちは昨年夏に取材を始め、アプリの運営者に関する詳細も報じていきます。サポートはこちらからお願いします。

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