誰が私を拡散したのか

App Store「写真/ビデオ」カテゴリで、アルバムコレクションが1位に 子どもの性的画像を売買(19)

2023年12月15日18時36分 辻麻梨子

(イラスト:qnel)

子どもの性的虐待や女性の盗撮画像が売買されているアプリ、アルバムコレクションが急速に広まっている。

12月11日、Appleが運営するApp Storeの「写真/ビデオ」カテゴリで、ランキング1位になった。

ランキングの上昇に伴い、特に子どもの画像が急増しているとみられる。

アルバムコレクションの運営者は事態を食い止める対策を打たず、Appleは傍観している。アルバムコレクションもAppleも、違法な取引で手数料を稼いでいる。

インスタやYouTube上回り1位

App Storeの「写真/ビデオ」のカテゴリでは、2位にInstagram、4位にYouTubeが入る。アルバムコレクションが1位であることの異常さが分かる。ここ数ヵ月は90〜100位前後を推移していた。13日には、無料アプリの総合ランキングでも7位にまで上昇した。

ランキングがどのように決まるのか、App Storeは詳しい仕組みを公開していないが、主にダウンロード数が影響するようだ。アプリのランクが上昇していることは、それだけ多くのユーザーに行き渡っていることを意味する。

突然アルバムコレクションの人気が上昇した理由はわからない。

12月11日に、「写真/ビデオ」のカテゴリでランキング1位になったアルバムコレクション

Xでの宣伝も増加

違法画像をアプリで販売するために、ユーザーが宣伝を行うのが、誰もが見ることができるX(旧Twitter)だ。アプリのダウンロード数の増加に伴って、X上での宣伝も活発になっている。

中でも多いと感じるのが、子どもの性的動画の宣伝だ。これまではアプリの掲示板で隠れるように投稿されていたような内容も、Xに堂々と載せている。シリーズ6回目の記事でも書いた、子どもの年齢や撮影されたシチュエーションを示す隠語が使われている。

毎日SNSを見張り、被害を確認している当事者の一人は、危機感を抱いているという。

「この1週間で、アルバムコレクションを宣伝するXの投稿が3〜4倍増えた印象です」

アルバムコレクションのパスワードばかりが投稿されている、掲示板サイトもある。ここでは、12月に入ってから7000件以上のコメントがついていた。ほとんどが子どもの映像であることを、隠語で仄めかしている。

犯罪の温床維持する運営者

繰り返し報じているように、アルバムコレクションはこれだけ違法な取引が蔓延していても、アプリを廃止にしない。

Tansaの質問には、「通報を受けたら投稿を削除している」「違法なユーザーを取り締まる」と返答するだけで、根本的な対策を打たない。取引のほとんどが違法画像を含む性的な画像である。個別のケースにしか対応しないのは、管理者としての責任を果たしていない。

そもそも、通報への対応が杜撰だ。ある被害者は、アルバムコレクションに度々削除を要請しても、すぐに応じなかった。削除をしたのかどうかの結果も、報告がなかったという。

前回の記事でも報じた通り、同じ仕組みを持つアプリ「写真箱」では有料画像の取引で投稿者に利益が還元される仕組み自体が問題だと裁判所に判断され、運営をしていた人物に有罪判決が下された。

Apple CEOは子どもの性被害を許容するのか?

AppleはApp Storeのトップページで、安全性を第一に謳う。

「10年以上にわたり、App Storeはアプリを見つけてダウンロードするための安全かつ信頼できる場所であることを証明してきました」「私たちが提供する約180万のアプリを、プライバシー、セキュリティ、コンテンツの面で最高水準に保つ」。

ところが実際には、犯罪の温床であるアルバムコレクションを、膨大なユーザーを抱えるAppleがばら撒いている。

昨年から複数回、私はApple Japanの秋間亮社長宛てに質問状を送付し、対応を求めてきた。しかしこれまで一度も返答はなく、無視されている状況だ。

そこで今回、米AppleのCEOであるティム・クック氏に、直接メールを送った。クック氏はApple共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏の後継者として、2011年から同社CEOを務める。

回答が来しだい、続報する。

=つづく

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