TM特別報告書

「天の秘密のルートがある」 岸信介から安倍晋三へ3代、TM報告書で統一教会が自負したパイプ(1)

2026年01月27日 17時47分  Tansa編集部

(左から)岸信介氏(国立国会図書館「近代日本人の肖像」から加工)、安倍晋三氏(shutterstockから)

自民党総裁の高市早苗にとって、安倍晋三は「政治の師」だ。

2026年1月5日には、安倍の遺影を携えて伊勢神宮を参拝した。

統一教会にとっても安倍は、最重要人物だった。岸信介から3代にわたって、日本での活動の「庇護者」として安倍家に頼った。

高額な献金や霊感商法で犠牲者が出ようとも、約60年間、日本で資金を得て韓国に送ることができた。

統一教会総裁のハン・ハクチャ(韓鶴子)への「TM特別報告」で、日本の統一教会幹部は、安倍家への「誰にも予測できない天の秘密のルートがあった」と自負した。

「主体性のない日本人」から献金集め

統一教会の資金源として、いかに日本が重要か。

2018年3月6日、日本の統一教会の会長・徳野英治がTM特別報告の中で述べている。

母の国の使命について負担感を持って消極的に取り組んでは絶対にいけない、すなわち義務感、使命感で担うものではなく日本の過去の歴史を帳消しにする、日本が生きていくために過去の歴史を清算し、母の国として選ばれた恩賜の摂理が、世界のための献金摂理であると訴えました。特に今月から献金の目標が30%上がり、より積極的に感謝しながら励んでほしいということを含め、約40分訴えました。

献金目標が30%上がったが、日本が韓国を植民地にした過去の歴史を贖う機会であり、日本の信者はこの機会に感謝しつつ積極的に献金を行え、ということだ。

日本の信者の特徴について、徳野は国民性の面からTM特別報告で言及している。2019年1月10日の報告だ。

日本人の性格は真のお母様もご存知の通り、眼前の目標の内容自体も重要としながらも、周囲の雰囲気、つまり全体の流れに非常に影響を受けるため、主体性がないということが国民性の特徴の一つでもあります。

「反共産主義」で一致

韓国の統一教会本部は、献金や霊感商法で得た資金を日本から送らせた。教団の教義が、それを正当化した。

「植民地支配により罪を犯した『エバ国家』の日本が、『アダム国家』の韓国に贖罪せねばならない」

だが岸信介をはじめ、自民党の政治家にとってこのように日本を非難する教義は、受け入れ難いはずだ。岸はもともと、「日本人は優秀である」という自負を抱いており、戦争に負けた後、日本が非難を浴びることが我慢ならなかった。回顧録ではこう述べている。

「米国当局は、日本軍の、特攻隊に象徴される勇敢さや、上官の命令には絶対に服従する規律の高さ、降伏よりは死を選ぶ武士道の精神及び、国民の困苦欠乏に耐える堅固さ、そして団結心など、日本人全体の道徳的水準の高さに驚愕したと察せられる」

「米国を中心とした連合国の初期の対日占領政策の基本は、戦争の責任をすべて日本国民に負わせ、日本国民が今日受けている困苦や屈辱はすべて自業自得であると思い込ませる点にあり、その意味で東京裁判も絶対権力を用いた“ショー”だったのである」

一方で、岸は共産主義を嫌悪していた。

岸は1948年12月24日、笹川良一や児玉誉士夫ら他の「A級戦犯」と共に巣鴨プリズンから釈放され、その後は反共産主義の政治家として歩んだ。笹川と児玉は右翼活動家で、後に自民党を支えるフィクサーとなる。

統一教会を創設したムン・ソンミョン(文鮮明)もまた、韓国で反共の役割を担っていた。統一教会の教義が「反日」であったとしても、岸は「反共」を共通項にして手を結んだ。

岸の元私邸に、統一教会の本部

統一教会が宗教法人として日本で認可されたのは、1964年。岸、笹川、児玉は統一教会の日本での活動をサポートした。1968年、教団で政治工作を担う「国際勝共連合」を日本で設立する際は、3人が発起人を務めた。

統一教会の本部は、東京・渋谷にあった岸の私邸の隣に置かれた。それまで岸が住んでいた場所だ。

岸は1970年、71年、73年と本部を訪れ、信者たちを激励する演説を行なっている。1973年4月に本部に足を運んだ際は、こう言った。

「御紹介がありましたように、私はここへは今回で3度目だと思います。その前に実は、統一教会と私の奇しき因縁は、南平台で隣り合わせで住んでおりました若い青年たち、正体はよくわからないけれども、日曜日ごとに礼拝をされて、賛美歌の声が聞こえてくる」

「笹川君が統一教会に共鳴してこの運動の強化を念願して、私に、君の隣りにこういう者が来ているんだけれども、あれは私が陰ながら発展を期待している純真な青年の諸君で、将来、日本のこの混乱の中に、それを救うべき大きな使命を持っている青年だと私は期待している」

「ずいぶん誤解もあり、親を泣かせるとマスコミも騒いでいる。そういう話を聞き、お隣りでもありましたので、聖日の礼拝の後に参りまして、お話したことがありました」

「ゴッドマザー」を通じて「安倍首相を教育」

親を泣かせるとマスコミも騒いでいる――。岸信介が語るように、1960年代後半から、入信した学生が親を「サタン(悪魔)」と呼んだり、家出をしたり、統一教会の活動が社会問題となっていた。その後、悪霊が憑いているなどと不安を煽って品物を高額で買わせる「霊感商法」や、信者の高額な献金も取り沙汰されるようになっていった。

しかし、統一教会は自民党の政治家を取り込むことで、組織防衛を図ってきた。特に岸以来、安倍家に浸透することが重要な政界工作だった。

2020年1月23日、統一教会会長の徳野英治がTM特別報告の中で述べている。

太田夫人はかなり昔に岸元首相と連絡した過去の心情的な縁があり、その縁で岸元首相のご息女である現在の安倍晋三首相のお母様である安倍洋子夫人と、長い間交流関係を続けております。そして今も定期的に安倍洋子夫人の自宅に個人的に招待されて会っているといいます。

「太田夫人」とは、国際勝共連合の会長を務めた太田洪量の妻、郁惠のことだ。

興味深いのはマンションの2階に安倍洋子夫人が、3階には安倍晋三首相夫婦が暮らしており、安倍首相は時たまお母様と食事をするといいます。そして太田夫人が言うには、たった2日前に安倍洋子夫人から彼女の自宅でお昼時に会いましょうという連絡がきたそうです。

安倍洋子は、晋三も頭が上がらない存在で「政界のゴッドマザー」と呼ばれていた。渋谷区の富ヶ谷にあった安倍家で、晋三夫妻と同居していた。

そして韓国と日本は古代から一つであり、現在の日本の文化と伝統はほとんど朝鮮半島から来たという太田会長の執筆した『恨を解く』という著書を「ご子息の安倍晋三首相にお渡しください」と言いながら安倍洋子夫人に渡したそうです。そうしたら、安倍洋子夫人は「安倍首相に必ず渡します」と約束してくださいました。

 

また、「現在の中国と北朝鮮の動きを考えると、やはり安倍首相がもう少し首相を務めなければなりません」ということと、「日韓関係について、もっと努力してくださることを願います!」、そして「そのためにもお母様である安倍洋子夫人が安倍首相をもっとよく面倒をみてくださり、正しくお導きください!」と安倍洋子夫人に進言し戻ってきたといいます。

安倍晋三が抱く日韓の歴史認識に関し、統一教会トップのハン・ハクチャは不満を抱いていた。TM特別報告書の他の箇所では、安倍晋三を教育するようハンが指示を出したことが記されている。太田郁惠はハンを意識して、「日韓関係についてもっと努力を」と進言したと考えられる。

徳野は、太田郁惠を通して安倍家にパイプがあると誇った。「誰も予測できない天の秘密のルート」と述べている。

そのような安倍首相のお母様である安倍洋子夫人についての直接的な進言のルートがあるという報告を太田夫人から聞き、私は正直なところ、誰も予測できない天の秘密のルートがあり、真のお母様の偉大な天運によって、天の奥妙な摂理が実に神秘的で不可思議な形で展開されているということを痛感いたしました。

 

岸元首相のご息女であり、現在の安倍晋三首相のお母様である安倍洋子夫人を通じてそのように間接的に安倍首相を教育する道も開いていっているということは、この日本でも天の偉大なる勝利権の恩恵の水脈が流れてきていると痛感いたしました。

(韓日翻訳:姜旼宙)

(敬称略)

主な参考資料

『誰も書かなかった統一教会』(有田芳生著、集英社新書)

『岸信介回顧録 保守合同と安保改定』(廣済堂出版)

『日本統一運動史』(光言社)

「統一教会と政府・自民党の癒着」(中野昌宏著)、『政治と宗教 統一教会問題と危機に直面する公共空間』(島薗進編、岩波新書)

「安倍3代と統一教会 半世紀余りの“組織的関係”の原点 『信者が40人いれば1人当選させられる』【報道の日2024】」(TBS)

「TM特別報告書」を報じるにあたって

TM特別報告書に関し、統一教会は反論し、自民党は目を背けています。

統一教会側からは2026年1月16日、世界平和統一家庭連合広報渉外局が「『TM特別報告 』(俗称)に対する当法人の見解」を公表しました。

見解では、TM特別報告書を作成した元世界本部長のユン・ヨンホ(尹煐鎬)氏のもとで活動していたとされる職員のリポートを掲載。TM特別報告書には意図的な省略、書き換え、追記が含まれている可能性が高く、「極めて信憑性に欠ける」と指摘しています。リポートの筆者である職員は匿名で、役職等も記されていません。

また、TM特別報告書に出てくる日本の政治家との関係については、「事実関係を超えて表現が誇張されている、文脈が脚色されている、あるいは事実として確認できない内容が含まれている可能性を否定できません」と書いています。

統一教会側からは、元会長の徳野英治氏もXで2026年1月8日に発信しました。TM特別報告書について、「私が韓総裁に報告するために元世界本部長に送った報告が含まれているのは事実」と自身の報告が含まれていることを認めた上で、「個人的意見や希望的予測なども多く含まれています」などと記しています。

自民党は元総裁の安倍晋三氏が殺害されて2カ月後、2022年9月に統一教会との関係を調査し「党としての組織的な関係はない」と結論を出しました。調査は議員による自己申告で極めて不十分なものでしたが、現総裁の高市早苗氏は、TM特別報告書を検証する意思が今のところは全くありません。2026年1月26日にはTBSの「news23」に出演。れいわ新選組共同代表の大石晃子氏にTM特別報告書に高市氏の名前が出ていることなどを指摘され「出所不明の文書」「名誉毀損になりますよ」とまで言っています。

Tansaは、3212ページある韓国語のTM特別報告書すべてに目を通しました。AIによる分析も活用し、翻訳者、取材パートナーである韓国の探査報道組織「ニュースタパ」と共に検証しました。

統一教会に関しては、ジャーナリストや研究者、被害者対策に取り組んだ弁護士や宗教家による膨大な調査結果が蓄積されています。Tansaは先達の仕事に敬意を払い、その成果も活用させていただきながら、TM特別報告書を検証しました。

その結果、統一教会と自民党の長年にわたる共依存を解き明かす上で、TM特別報告書は極めて重要な資料であると判断しています。

TM特別報告書について報じながら、取材を続けます。統一教会と自民党の癒着について、明かされていない内部情報をお持ちの方は、ぜひTansaまでお寄せください。責任を持って情報源を秘匿し、お守りします。

情報提供にあたっては、以下のページをご参照ください。連絡方法や注意点、公益通報者保護法のポイントを掲載しています。

https://tansajp.org/whistleblower/

統一教会は2015年に「世界平和統一家庭連合」と名称変更し、マスコミ各社は「旧統一教会」と呼称しています。しかし、教団がはらむ問題には連続性があるため、Tansaは「統一教会」と表記します。

 

2026年1月27日

Tokyo Investigative Newsroom Tansa

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