虚構の地方創生

飛来したツル見る干拓地での密回避、町幹部の公用車にアルファード/全国ワースト100事業 九州・沖縄編(5)

2022年04月13日19時55分 辻麻梨子、齋藤林昌、長谷野新奈、小倉優香

東京ドーム100個分もある屋外で「密」になりうるのだろうか。コロナ対策の拡大解釈が横行している。地方創生臨時交付金が充てられた無駄遣い100事業を、一覧形式で報じるのは今回の九州・沖縄編で最終回だ。前回の中国・四国編はこちら

Tansaは、2020年度の第1次と第2次の補正予算で計上された地方創生臨時交付金の事業をデータベース化した。都道府県と市町村が内閣府に提出した事業計画に基づいている。事業の数は約6万5000件、金額は計3兆円に上る。

データベース上の全事業に目を通し、納税者の視点から無駄遣い100事業を選んだ。

スライダーの表中の事業費は、自治体によって交付金の額を示している場合と、交付金以外の予算も含む総事業費を記している場合とがある。さらに表中から一部の事業を選んで、その取材結果を報じる。

鹿児島県出水市でシベリアから飛来したツルが冬を越す干拓地(鹿児島県観光サイトより)

「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」

新型コロナの感染拡大防止と、感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活を支援し地方創生を図る目的で、2020年4月に決定された交付金。2020年度の第一次補正予算で初めて1兆円が組まれて以降、3回の補正予算と5回の予備費がつけられた。総額は15兆1760億円。自治体が自由に使うことのできる「地方単独事業分」のほか、時短営業や休業に協力する飲食店への協力金やコロナの検査を無料にするための費用なども含まれている。

九州

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福岡県桂川町 電子ディスプレイ設置

交通安全の呼びかけ兼ねる

福岡県は、地方創生臨時交付金363万円を使って、県道66号の交差点に電子ディスプレイを設置した。手洗いやうがいなどコロナの感染予防を促すためだ。

ディスプレイを設置した交差点は、人口約13400人の桂川町にある。県総務課の担当者によると、周囲に学校や役場、図書館などがあり、通勤の時間帯は交通量が多い。これまで感染状況や予防喚起については広報誌や防災無線で行なっていたが、市民が恒常的に目にするツールを増やすことが目的だという。

ディスプレイでの「緊急事態宣言発出中」は、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に似ている太いフォントだ。

ただ、感染予防を促す情報だけを流していては住民が飽きるのではないかということから、現在は交通安全の呼びかけも兼ねている。

長崎県川棚町 公用車

アルファード購入し幹部の感染リスク対策

長崎県川棚町は人口約13500人の町だ。地方創生臨時交付金385万円を充て、町幹部が使用する公用車1台を購入した。車種はトヨタのアルファード。幹部用公用車を使えるのは、町長、副町長、教育長のほか、各課の課長など15人程度だ。

もともと町が所持していた公用車は30台。現場に視察に行くための軽トラックや乗用車も含まれ、一般の職員たちが使用している。これまで幹部用の公用車はなかった。

幹部用として新たに公用車を購入した理由は、コロナの感染対策だ。

公用車を購入した2020年秋頃は、まだ町でコロナに感染した人は1人もいなかった。だが町内での感染が広がれば、幹部たちは対策本部を仕切る役割がある。幹部の感染リスクを下げるため、専用の公用車を購入したという。それまでは幹部でも町外へ出張に行く際には、鉄道やバスといった公共交通機関を使っていた。

町幹部は公用車を多い時で、月に10回ほど使用しているという。

だが、町が継続的に使用するものであれば、一般財源を充てればいいのではないか。

そう尋ねると総務課の担当者は「私はその当時は今の係にいなくて、詳しくはわからないんです」。

交付金を幹部用の公用車に使ったことへの町民からの意見や批判については「今のところはないですね」(同職員)。

鹿児島県南九州市 緑茶給湯器を小中学校に設置

「カテキンパワーでコロナ感染予防」

鹿児島県南九州市は、ボタンを押すと自動的にお茶が出てくる給茶器を市内の小中学校21校に設置した。給茶器は1つ約37万円、1校あたり1〜3個の給茶器を備えつけた。財源には地方創生臨時交付金1030万円を充てた。

目的は「カテキンパワーによる感染症対策をはかる」ことと、市内の茶農家への支援だ。この地域の緑茶は新茶が日本で一番早く出荷されることで有名で、南九州市の特産品。だが、この事業を担当する市教育委員会学校給食センターの担当者によると、コロナの影響で旅館が買っていた緑茶が減少したという。

ただどの程度、市内の農家の茶葉の売り上げが減っているかや、「カテキンパワー」による感染防止効果については、担当者は把握していないという。

鹿児島県出水市 ツル越冬地の入域規制実験

東京ドーム100個分の場所に、人が密集?

鹿児島県出水市は日本最大のツルの渡来地だ。毎年10月から3月ごろにかけて1万羽を超えるツルがシベリアから飛来し、出水で冬を越す。2021年には国際的に重要な湿地として、ラムサール条約の指定する湿地に登録された。

市は2021年1月23日から2月7日までの間、ツルが越冬する干拓地約478ヘクタールへの観光客の立ち入りを制限した。観光客の密集を防ぎ、コロナ対策につなげるのが目的だ。規制エリアに入る際に500円〜1000円程度の協力金の支払いを依頼したり、ツル観察に関する事前説明を受講してもらったりすることで、人数を絞るという。

その際にかかる1日あたり2人程度の警備委託費、立ち入りを制限する看板やチラシの作成費に地方創生臨時交付金約380万円使用した。

だが、入域規制エリアの広さは東京ドームに換算すると、約101個分だ。徒歩での移動も難しいため、訪れる多くの人がマイカーを利用している。感染につながるようような密集状態になるのだろうか。

実は、ツルの越冬シーズン中の数日間に入域規制を行うのは、今回で5回目。ツルの保護と農漁業、観光利用との両立を目指す社会実験として行ってきた。コロナ対策が本来の目的ではないようだ。

沖縄

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沖縄県宜野湾市 観光PR

市民50人のダイビング講習費用負担

宜野湾市は、市民50人のダイビング講習費と珊瑚の植樹体験費を一部負担した。コロナで売り上げが落ち込んだ市内のダイビング業者を支援するためだ。観光客を呼び込むため、ダイビングや珊瑚の植樹体験をPRした映像も制作し、合わせて地方創生臨時交付金1499万円を使った。

元々宜野湾市はダイビングスポットではなかった。観光スポーツ課の担当者によると、別事業で行なった海中の清掃作業中に珊瑚が思いのほか発達していることがわかり、観光に活かすことにしたという。

ダイビングと珊瑚の植樹体験に充当した交付金は929万円。講師代や珊瑚の苗代、船代などに使った。参加者は、ライセンス取得代やシュノーケルのレンタル費など1万〜2万円の負担で済んだ。

参加者は市のHPとLINEを活用して募集。定員50人は、募集開始から3日程で満員になった。観光客を呼び込むのであれば市外や県外から募集するのが効果的だが、宜野湾市民に対象を絞った。

PR映像の作成費は570万円。映像制作は、水中映像専門の県外業者に委託した。映像は、宮古島や東京、大阪にあるダイビング練習施設にVR映像として置かれたり、観光復興協会のYouTubeに掲載されている。PV数は現在200〜400回程度だ。

観光スポーツ課の担当職員は「今後ダイビング事業を発展していくための基盤作りができた」と話す。

=つづく

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