経産省出身の今井尚哉氏は、安倍晋三政権を支えた。現政権では、高市早苗首相に請われて内閣官房参与に就いている。
その今井氏は、仕事でメールを使わない。
Tansaは2020年4月、「今井尚哉首相補佐官が2020年3月1日〜同年3月31日までに業務で使用した全てのメール」を内閣官房に情報公開請求したことがある。政権のキーパソンである今井氏の仕事を検証するためだ。
情報公開法では、業務でのメールのやり取りは「行政文書」に該当する。実際、Tansaが別件で省庁や自治体に情報公開請求した際、メールが開示されている。
だが内閣官房は不開示決定をした。その理由に驚いた。
「本件対象文書について、保有していないため不開示」
今井氏のメールの内容を開示できないのではない。メール自体を保有していないから開示しようがない。そう内閣官房は述べているのだ。請求したのは2020年4月で、開示を求めたのは前月の3月分のメール。削除しているはずもない。
この不開示決定に沿えば、今井氏は仕事でメールを使わないということになる。だが嘘に決まっている。常識で考えれば分かる。
今井氏自身、「仕事でメールを使わないなんて嘘だ」と今週発売の週刊文春で自白した。
文春の記事は、今井氏が月刊誌の『選択』の報道内容を否定したという内容だ。
『選択』は「ホルムズ海峡へ自衛隊を派遣するつもりでいた高市氏に、今井氏が『国難だ』、『あんた、何考えているんだ』と首相執務室に乗り込んで恫喝するような剣幕で言った」と報道した。
今井氏は、「100%事実ではない」と言う。
「はっきり言いますけれども、高市総理に色々アドバイスを求められた時は、資料も添付してメールでやり取りしています。部屋に行くことはないんです」
私はこの記事を読んで笑ってしまった。
今井氏は、「高市氏の執務室へ乗り込んで恫喝した」ことを否定したいあまり、「メールでしかやり取りをしていない」と言っている。内閣官房の「メールは保有していない」という不開示決定の理由を否定したことになる。
同じ失敗を次世代にさせないために
今井氏の件だけではない。国家運営の中枢で行政文書の隠蔽が横行している。情報公開法は「絵に描いた餅」だ。
「森友文書」は典型例だ。
2017年2月24日の衆院予算委員会では、財務省の佐川宣寿理財局長が「交渉記録については残っていないというふうに思われます」と答弁していた。ところが、改竄を強いられ自死した赤木俊夫さんの妻・雅子さんが関連文書の不開示決定を取り消すよう求めた訴訟で勝訴すると、交渉記録を含む17万ページの文書が開示されることになった。
「国葬文書」をめぐっては、内閣法制局と内閣官房・内閣府が3日間にわたり、国葬実施を閣議で決めることの是非を協議したのに、「文書は捨てた」か「記録を取っていない」と国は主張する。
Tansaは、2024年9月に国を提訴。「国葬文書隠蔽裁判」を、自由人権協会(JCLU)の弁護団と共に闘っている。行政文書は国のものではなく、市民のものであるということを名実ともにはっきりさせたいからだ。
「国葬文書隠蔽裁判」は、シリーズ「記録のない国」で報じている。シリーズ化にあたってqnelさんにイラストを描いてもらった。
qnelさんは、Tansaの辻麻梨子と中学生時代からの友人。辻が趣旨を伝えながらできたのが、子どもが国会を持ち上げて中身を見ても、スカスカという光景だ。自分たちの責任を回避するため都合が悪いことを隠すのは、次世代への裏切りだ。
記録を残して共有することは、「我々と同じ失敗はしないでくれ」という願いを込めてバトンを引き継ぐことではないだろうか。

(イラスト:qnel)
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