保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~

言論封殺に抗し、石川陽一氏が共同通信を提訴へ/7月24日に日本外国特派員協会で記者会見

2023年07月21日14時02分 中川七海

Foreign Correspondents’ Club of Japan 公式サイトより

共同通信の職員・石川陽一氏が、言論の封殺に抗し、同社代表理事の水谷亨氏を提訴する。期日は2023年7月24日付。同日午後2時から代理人弁護士の喜田村洋一氏と共に、東京にある日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を開く。

経緯はシリーズ「保身の代償」で報じた通りだが、簡単におさらいをする。

石川氏は、長崎市の海星学園高校2年だった福浦勇斗さん(当時16歳)のいじめ自殺事件を追ってきた。2022年11月に文藝春秋から発行された著書『いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』では、共同通信の加盟社である長崎新聞の報道姿勢を批判した。海星学園による、自殺を「突然死」とする遺族への提案を県が追認したにもかかわらず、長崎新聞が県の態度を庇ったことを批判した。

加盟社である長崎新聞を批判したことに対し、共同通信は石川氏の責任追及を始めた。2022年12月6日には、審査委員会を設置。委員を石川氏にも明かさないまま審議した。

2023年1月27日、審査委員会の結果をもとに、共同通信は総務局長の江頭建彦氏の名前で石川氏に通知を出した。石川氏について「共同の記者としての基本動作を怠り、共同通信社と長崎新聞社の信頼関係を著しく傷つけた」などと断定した。

出版元は文藝春秋であるにもかかわらず、通知では本の重版を認めない決定を下した。今回の経緯をメディアで公表した場合は懲戒の可能性があるとも記した。

5月、石川氏は記者職を剥奪された。

石川氏は三つの権利を侵害されたという理由で、損害賠償を求める。記者としての資質を否定された「名誉感情」の侵害、重版を禁止されたことによる「財産権」の侵害、そして憲法第21条が規定する「表現の自由」が保障する「報道の自由」の侵害だ。

石川氏は三つのうち、報道の自由の侵害を最も重視している。私の取材に次のように話した。

「ここで簡単に折れてしまったら、勇斗くんとご遺族に申し訳ない。報じるべきことを報じさせないことを許す前例を作ってしまえば、他の記者たちの仕事にも影響が出てくる」

喜田村氏は報道の自由を守ることで定評のある弁護士で、こう語る。

「報道の自由は憲法で保障されており、民主社会を実現するための重要な権利だ。萎縮してはならない」

7月24日のFCCJでの記者会見は、オンライン視聴も可能だ。詳細はこちら

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