保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~

「この10年、どれくらいの子どもたちがいじめで命を絶ったことか」/遺族が法改正を訴え署名集めを開始/長崎高2いじめ自殺

2023年12月15日18時30分 中川七海

きょう、いじめを苦に自殺した私立海星学園高校2年(当時)の福浦勇斗(はやと)さんの遺族が、「いじめ防止対策推進法」の改正を求める署名活動を立ち上げた。

いじめ防止対策推進法は、2011年に起きた「大津市中2いじめ自殺事件」に端を発し、2013年に制定された法律だ。学校や教育委員会がいじめの隠蔽を図り、その責任から逃れようとしたことから、同法には学校、自治体、国がすべき具体的な対応が盛り込まれている。

しかし、勇斗さんの事件ではいじめ防止対策推進法が機能しなかった。海星学園は2017年のいじめ自殺を隠蔽しようとし、長崎県がそれを容認した。2018年、弁護士や他校の元校長らからなる第三者委員会が「いじめが自死の主たる要因」と調査結果を出したが、学校はその内容を否定したまま、現在に至っている。

法律ができてからこの10年、学校や行政による事実の隠蔽や責任逃れは全国で繰り返されてきた。いじめを苦にした子どもの自殺は絶えない。

法律を守らなくても学校側は罪に問われない。そのような学校を指導しなくても行政は許される。勇斗さんの遺族は、現状を変えるためには法改正が必要だと考えている。

「いじめを放置したり虚偽の報告をする学校や自治体には、国が直接立ち入り調査をおこない処分を課するなどの仕組みづくりが必要と考えます」

「この法律は本当に子どもたちの役に立っていますか。この10年間、どれくらいの子どもたちがいじめで悩み苦しみ、自ら命を絶ったでしょうか。いじめ防止対策推進法は、誰のための法律ですか。何のための法律ですか」

署名は、オンラインから誰でもできる「change.org」で集め、文部科学大臣や与野党に提出する予定だ。

オンライン署名サイト「change.org」より

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