記録のない国

「質問なし、意見なし」、メールのやり取りは即削除? 国が主張する国葬協議の3日間

2025年06月10日 18時30分  Tansa編集部

6月12日、Tansaが国を訴えた「国葬文書隠蔽裁判」の第3回口頭弁論が東京地裁で開かれる。

この裁判でのポイントは、2022年7月12日、13日、14日の3日間で、内閣法制局と官邸側がどのような協議をしたかだ。官邸側からは内閣官房と内閣府が出席した。当時の岸田文雄首相は、この3日間の協議を受けて、安倍晋三・元首相の国葬実施を閣議決定した。国会や記者会見で説明してきた。

ところが国は、この3日間の協議内容を記録した文書について「記録を取っていない」、「廃棄した」と主張している。

前回3月12日の口頭弁論では、篠田賢治裁判長がこの3日間に関し言及した。

「従前は省庁側が内閣法制局に説明したら、法制局の参事官から質問がある。省庁の担当者は宿題として持ち帰るから、メモをするはず」

そして、被告の国に「宿題」を出した。

「イメージがわかないので、そこを踏まえた釈明をしてほしい」

5月30日、国からその宿題が「準備書面」として提出された。

イチからわかる、Tansaが国を訴えた「国葬文書隠蔽裁判」って?

保存義務ある文書を「遅滞なく」破棄

国葬を閣議決定で行うことを決めた3日間の協議の記録として、内閣官房と内閣府が唯一、開示している文書がある。内閣官房と内閣府の連名による「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」。内閣が行政権の範疇で国葬を行うことができると主張している文書だ。4枚ある。

文書の日付は2022年7月14日。つまり内閣法制局との協議の最終日だ。3日間の協議を終え、「閣議決定で国葬を実施できる」という結論を示した確定文書ということになる。

これに対してTansaは、確定文書だけではなく、協議のプロセスを記録した文書があるはずだと指摘してきた。

そこで、国が持ち出してきたのが「案段階文書」だ。上記の確定文書の素案となった文書だ。国は今回提出した準備書面で、案段階文書に言及しながら、3日間の協議について説明している。

だがツッコミどころが満載だ。概要を疑問点と共に記す。

①7月12日、内閣官房と内閣府の担当者が内閣法制局を訪問。案段階文書を示して内容を説明したところ、内閣法制局からはその場で具体的な指摘はなかった。

疑問点:内閣法制局は、案段階文書に関して質問すらしなかったのか。

②7月12日から14日までの間に、内閣法制局から電話連絡があった。案段階文書の修正に関する連絡で、内閣官房と内閣府の見解の変更に至るような修正ではなかった。

疑問点:見解の変更に至らない修正とは具体的にどのような内容か。

③内閣法制局からの電話連絡を踏まえ、案段階文書を修正。内閣法制局にメールした。

疑問点:どの部署の誰が電話連絡を受け、内閣法制局に修正文書をメールしたのか。

④7月14日に内閣法制局から電話があり、修正済みの案段階文書について「意見がない」という旨の回答があった。

疑問点:「意見がない」というのは、内閣法制局が了解したということと同じ意味なのか。「旨」とは具体的にどのような内容なのか。

⑤内閣法制局からの回答を受けて、文書を確定。案段階文書は遅滞なく破棄した。内閣法制局へのメールも遅滞なく削除した。

疑問点:公文書管理法では閣議決定に至る過程を記録し、後に検証できるよう文書を保存することを義務付けている。法に違反するのではないか。

「アベノマスク文書隠蔽裁判」では不開示取り消し

国の準備書面の内容はスカスカ。3日間にわたる内閣法制局と内閣官房・内閣府の協議の実態がまるで見えてこない。「イメージがわかない」と具体的な説明を求めた篠田賢治裁判長への回答になっていない。

国は、このようないい加減な回答で逃げ切れると考えているのだろうか。

参考になる裁判の判決が6月5日にあった。「アベノマスク文書隠蔽裁判」だ。神戸学院大学の上脇博之教授が、業者との契約プロセスを記録した文書を開示請求したところ、「記録がない」と国が不開示。上脇教授は「ないはずがない」と国に開示を求めていた。

大阪地裁(徳地淳裁判長)は「メールや報告書がないことは考えがたい」と認め、国の不開示決定を取り消した。

国葬文書隠蔽裁判では、以下の7種の文書が「ないはずがない」と考え、Tansaは国に存否を明らかにするよう求めている。省庁の関係者に取材した結果、7種を推定した。6月12日の第3回口頭弁論以降も、被告の国を追及していく。

①内閣法制局に提出した内閣官房ないし内閣府のポジションペーパー(立場上の見解)

②内閣法制局からの質問や意見、内閣法制局が結論を出す時期の見通し等を記載した内閣官房ないし内閣府内で報告した文書またはメール

③内閣法制局から出された質問や課題に答えるために作成又は取得し、内閣法制局に交付ないし提示した文書またはメール

④上記③のような文書の準備のために内閣官房及び内閣府の内部、内閣官房と内閣府との間でやりとりしたメール

⑤内閣府間でやりとりしたメール

⑥内閣総理大臣秘書官(その他内閣総理大臣に取り次ぐ者)に内閣法制局が打ち合わせの状況や内容について報告した文書ないしメール

⑦内閣総理大臣秘書官(その他内閣総理大臣に取り次ぐ者)から受領した文書ないしメール

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