編集長コラム

「担当を代えてください」(101)

2024年03月02日18時45分 渡辺周

Tansaが岸田文雄首相に対して、行政不服審査法に基づき審査請求を行ったのは2023年1月27日のことだ。内閣官房と内閣府が「国葬文書」を開示しなかったことへの措置だ。

安倍晋三元首相の国葬を実施する前、内閣官房と内閣府は「法の番人」である内閣法制局と協議した。憲法や法律に違反しないかを確認するためだ。だが官邸側は、協議内容を記録した文書を「作成していない」、もしくは「捨てた」とTansaに主張した。「文書がないのだから開示しようがない」という理屈だ。明らかに嘘だ。

審査請求から1年以上が経った。先日、私は審査会の事務局を務める総務省の担当課に電話した。「いつになったら審査結果が出るのか」と。

担当者は「それは分からない」と言う。審査会を開く時はこちらに知らせるのかと聞くと、「それも言えない」。

私はTansaの代表として審査請求をしている。当事者だ。当事者に審査会の日程すら言えないなんてことがあるのか。

担当者:「制度のことであれば総務課へお尋ねください」

渡辺:「総務課の何係ですか」

担当者:「調整係です」

私はこの担当者と話をしていても仕方がないと思い、「ならば総務課の調整係に電話するから番号を教えてください」と言った。

すると告げられた電話番号は代表番号だった。それなら最初から知っている。なぜ直通番号を教えないのか。私は頭にきて「あなたの氏名は?」と聞いた。その担当者は憮然とした口調で言う。

「なぜ名前を言う必要があるのでしょうか」

「あなたは公務として審査会の事務局を担当している。今回の審査請求は法律に基づいた手続きであり、審査結果が不服の場合、こちらは訴訟を起こします。裁判になった時のため、一連の審査請求手続きの中で、あなたが担当者としてこちらに不利な言動をしなかったか、嘘をつかなかったかを記録しておく必要がある」

担当者は「趣旨は理解しました」と言って、「シシドです」と名乗った。すぐに電話を切ってしまった。

シシド氏のような態度を、「不真面目な官僚も中にはいる」で済ませることはできないと思う。「魚は頭から腐る」という言葉のように、岸田首相以下、職業倫理を捨て去っている政治家たちが蔓延し、そのことが行政府全体を弛緩させているからだ。

この状況を打開するにはどうしたらいいか。ヒントになることがあった。

先月、中川七海と内偵中の案件で某県の県庁に取材に行った時のことだ。6、7人の県職員が私たちを大きな会議室に迎え入れて取材に対応した。不自然なくらいに低姿勢だが、的を射た答えは返ってこない。特に中川と以前から電話とメールでやりとりをしていた職員が、当該の法律を無視するような回答を連発してくる。追っているのは重大な被害が起きている案件だ。中川がたまりかねて言った。

「担当を代えてください。話になりません」

なるほどと思った。私はいい加減な取材相手に対して、怒ることはよくあるが、担当を代えろとは言ったことがない。

もちろん、中川に県職員の人事権があるわけではないので、担当は代えられない。それでも、中川の発言から他の職員たちがピリッとした。こちらの質問に真摯に答えようとするようになった。

政治家の場合は、有権者が選べる。

野党がだらしないとはいえ、自民党は墜ちるところまで堕ちた。次の選挙で「交代してください」と迫らなければ、権力のメルトダウンを食い止めることはできないと思う。

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