2024国際航空宇宙展での三菱重工のブース=2024年10月19日、羽賀羊撮影
日本経済が斜陽の中、なぜ自公政権は防衛費を増やすのか。背景には、政府からの兵器受注で莫大な利益を得る軍需企業と、そこから献金を受ける自民党との蜜月関係があった。冷戦終結後から現代に至るまでの、財界と自民の足取りをたどる。
冷戦が終わり、世界は軍事費削減へと舵を切った。
1990年4月9日の衆議院予算委員会。当時は野党だった公明の市川雄一議員が、海部俊樹首相を質す。
「米ソ首脳が冷戦終えんを確認している。世界情勢が大きく変わった。そういう中で前年度比6.1%も防衛費をふやす必要はあるのか。あるいはこれからの防衛力の整備に当たって、アメリカも1800億ドルですか、防衛費の削減を3年ぐらいでやる、こうおっしゃっている。ソ連もかなり防衛費を削ろうとしている」
海部首相の答弁は曖昧だったが、「大きな方向としては、委員の今申されたことと私は近いのではないか、こう思いながら承っておりました」と言った。
日本でも、防衛調達予算は1991年度を境に減少に転じる。防衛調達予算とは、人件費などを抜いた予算のことだ。
経団連「生産ラインの維持困難になる」
このままでは軍需企業は痛手を被ることになる。
1993年10月、三菱重工業会長の飯田庸太郎らは、中西啓介長官ら防衛庁幹部と懇談会を開いた。飯田会長は「発注を減らさないでほしい」と要望した(1993年10月19日付朝日新聞)。
飯田会長は、この年の1月30日に掲載された毎日新聞のインタビューでは、次のように語っている。
「防衛の必要性そのものが問われることがないまま(中期防衛力整備計画の)見直しが決まってしまった。日本は独立国としてやっていけるのかとまで思ってしまう」
「独立国として門を閉めることは、夜、カギをかけて寝ることと同じ。中国や韓国など隣近所の情勢をよく見て決めないといけない」
1995年には、経団連が「新時代に対応した防衛力整備計画の策定を望む」という提言を出して、政府に軍需産業を支援するよう求めた。このままでは「生産ラインの維持が困難」と述べている。
「欧米諸国とは異なり、わが国には国営の軍需工場は存在しないため、わが国の防衛生産・研究開発、装備の維持・補給・能力向上を支えているのは、産業界である。また、装備品の生産は、中小企業を含む多数の企業の参加により可能となっている。しかし、市場が国内に限定された中で、ここ数年、装備予算が削減されてきていることから、各社とも技術者や生産ラインの維持が困難になってきている」
★1990年から1995年における、政府からの防衛関連の受注額上位10社。上段が受注額。下段が国民政治協会(自民党への企業・団体献金を受け入れる政治資金団体)への献金額。
親会社名 | 1990年 | 1991年 | 1992年 | 1993年 | 1994年 | 1995年 |
三菱重工業 | 4408億 2900万円 |
3544億 1700万円 |
3393億円 | 2649億 5000万円 |
2790億円 | 2290億円 |
4224万円 | 4865万円 | 5951万円 | 2643万円 | 910万円 | 1908万円 | |
川崎重工業 | 1464億 6900万円 |
1413億 6100万円 |
1134億円 | 1261億 2000万円 |
1482億円 | 1569億円 |
1075万円 | 1807万円 | 2443万円 | 1142万円 | 480万円 | 283万円 | |
三菱電機 | 1127億 3100万円 |
1072億 4500万円 |
1089億円 | 915億 7000万円 |
959億円 | 1085億円 |
7951万円 | 1億1001万円 | 4801万円 | 3401万円 | 2101万円 | 1610万円 | |
IHI | 786億 400万円 |
1047億 6100万円 |
726億円 | 938億 5000万円 |
527億円 | 563億円 |
1780万円 | 2583万円 | 2339万円 | 1380万円 | 390万円 | 1201万円 | |
日本電気(NEC) | 544億 5600万円 |
565億 2800万円 |
523億円 | 435億 2000万円 |
531億円 | 729億円 |
4440万円 | 4770万円 | 4770万円 | 3850万円 | 2100万円 | 4000万円 | |
東芝 | 599億 400万円 |
481億 2000万円 |
411億円 | 394億 5000万円 |
412億円 | 508億円 |
4800万円 | 4800万円 | 4800万円 | 4800万円 | 3420万円 | 2622万円 | |
SUBARU | 215億 7700万円 |
321億 8500万円 |
293億円 | 307億 8000万円 |
248億円 | 280億円 |
1752万円 | 1734万円 | 1622万円 | 1712万円 | 1000万円 | 1256万円 | |
日本製鋼所 | 348億 1900万円 |
275億 2000万円 |
199億円 | 199億 2000万円 |
194億円 | 334億円 |
236万円 | 450万円 | 704万円 | 239万円 | 0円 | 0円 | |
日産自動車 | 131億 4500万円 |
138億 4500万円 |
281億円 | 288億 3000万円 |
296億円 | 295億円 |
4690万円 | 4920万円 | 1038万円 | 4680万円 | 2690万円 | 2500万円 | |
小松製作所 | 224億 3800万円 |
227億 9000万円 |
216億円 | 239億 4000万円 |
238億円 | 242億円 |
1200万円 | 1530万円 | 1130万円 | 1200万円 | 0円 | 0円 |
注記
・受注額は防衛庁の資料等から集計
・子会社の受注額及び献金額は現時点での親会社に統合して集計
・当時の社名は現在の社名に表記を統一
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