自民支えた企業の半世紀

米国政府の言いなり安倍政権/経団連は受注減に焦り【政治と軍需企業-7】

2024年10月27日12時22分 Tansa編集部

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2019年に日米首脳会談のため米国を訪問した安倍晋三・元首相=首相官邸ホームページより

日本経済が斜陽の中、なぜ自公政権は防衛費を増やすのか。背景には、政府からの兵器受注で莫大な利益を得る軍需企業と、そこから献金を受ける自民党との蜜月関係があった。冷戦終結後から現代に至るまでの、財界と自民の足取りをたどる。

安倍晋三政権は2014年4月、武器輸出3原則を廃止した。日本の軍需産業にとっては、武器の輸出は念願だ。国内企業は安倍政権で優遇されたことになる。

だが安倍政権にとって、最重要パートナーは米国だ。2012年12月に第2次安倍政権が発足してからは、戦闘機など米国から大量に兵器を買い始める。2013年度に1040億円だった購入額は、2017年度には3倍以上の3791億円にまで膨らんだ。

米国からの兵器購入は、対外有償軍事援助(FMS)と呼ばれる契約に基づいて行われる。この契約の不平等な点は、兵器の価格を米政府が決めることだ。

例えばF-35A戦闘機。1機あたりの価格は、2012年で97億円だったのが、2016年度には1.6倍の157億円にまで上昇している。

それにも関わらず、日本政府は価格が上がった理由すらまともに把握していない。税金が適切に使われたかをチェックする会計検査院は、価格の上昇について次のように指摘している。F-35A戦闘機の契約額が総額で4456億円と多額になっていることを踏まえた。

「合衆国政府に対して定量的に要因を確認する必要がある」

要は、「米国の言いなりになって日本の税金を無駄遣いするな」ということだ。

生産体制が「根本的に瓦解」と迫る経団連

実際、米国からの受注が増えているこの時期、日本の軍需産業の中には打撃を受けている企業がある。典型的なのは、業界最大手の三菱重工業だ。下記の表が示すように、2016年は4532億円だった受注額は、2018年には半分以下の1949億円にまで減っている。自民党への献金額は、毎年3300万円で変わらない。

窮地を打開するため、経団連が乗り出す。2018年6月、『新たな防衛計画の大綱・次期中期防衛力整備計画に向けて』という提言を発表する。

「限られた予算の下で海外からの防衛装備品の調達が増加していることを受けて、国内の防衛産業は事業の見直しを迫られている」

「目下の状況は、わが国防衛産業の生産性向上に向けた努力に水を差しかねず、また防衛装備品の能力向上のための企業の創意工夫を妨げている。今や国内の防衛生産・技術基盤は、根本から瓦解し、わが国の安全保障にも影響する危険を内包しているといっても過言ではない」

「競争関係にある海外企業と同様に、投資原資となる適正な利益が確保できるよう、わが国防衛産業に対して適切な政策支援を行い、企業自らの能力発揮を促すことを通じて、国内の防衛生産・技術基盤の効率化・強靭化を図り、ひいては将来的な国の安全保障の確保につなげていく必要がある」

経団連は、国内企業の生産体制が「根本から瓦解し安全保障に影響する」とまで言った。安倍政権を継承した岸田文雄首相は、国内の軍需産業に十二分に報いる政策を実行していく。

★2016年から2020年における、政府からの防衛関連の受注額上位10社。上段が受注額。下段が国民政治協会(自民党への企業・団体献金を受け入れる政治資金団体)への献金額。

親会社名 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
三菱重工業
4532億円 2457億円 1949億円 3127億円 3102億円
3300万円 3300万円 3300万円 3300万円 3300万円
川崎重工業
994億円 1864億円 1534億円 971億円 2150億円
300万円 300万円 300万円 300万円 300万円
三菱電機
767億円 957億円 1115億円 1026億円 797億円
1820万円 1820万円 2000万円 2000万円 2000万円
日本電気(NEC)
905億円 1177億円 686億円 716億円 674億円
1500万円 1500万円 1500万円 1500万円 1500万円
富士通
783億円 479億円 572億円 487億円 847億円
1500万円 1500万円 1500万円 1500万円 1500万円
東芝
348億円 632億円 265億円 242億円 504億円
50万円 50万円 50万円 0円 0円
小松製作所
317億円 280億円 273億円 255億円 218億円
800万円 800万円 800万円 800万円 800万円
日立製作所
157億円 200億円 196億円 165億円 227億円
3200万円 3200万円 5350万円 5350万円 5350万円
IHI
355億円 100億円 127億円 0円 354億円
1000万円 1000万円 1000万円 1000万円 1000万円
沖電気工業
198億円 226億円 76億円 146億円 157億円
0円 0円 0円 0円 0円

注記
・受注額は防衛省・防衛装備庁の資料等から集計
・子会社の受注額及び献金額は現時点での親会社に統合して集計
・当時の社名は現在の社名に表記を統一

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